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百田尚樹の黒歴史「殉愛」

百田尚樹の作品は、最近の作家の中ではトップの売れ行きらしい。
僕も「永遠の0」から、かなりの作品を読んでいるので、誰にも知られてはいないが、作家、百田尚樹の影のスポンサーの一人を自認している。
基本的に百田尚樹の作品は、エンターテインメント性が高く、読者へのサービス精神に溢れている。
要は、当たりはずれが少なく、読んでいて面白い。
最新の「百田尚樹 永遠の一冊」は、家族が百田尚樹と人となりを語るなど、人間百田尚樹を知る上では大変貴重な雑誌だ。

その雑誌の中に、「百田尚樹が自ら全著作を完全解説!」なるコーナーがある。
高評価を連発した綺羅星のような彼の作品群の中で、しかしながら、本人にとって黒歴史としか言いようのない作品もある。
それが、散々物議を醸した「殉愛」ではないだろうか。
百田尚樹本人は、今回の書評の中で『殉愛』に書かれている内容はすべて真実です」と強がっているが、一方では「この記述だけでこの雑誌は信用ゼロ」との痛烈な批判があるくらいだ。

「殉愛」は、やしきたかじんの妻を描いたノンフィクションとなっているが、発売直後にやしきたかじんの家族から大クレームを受けた。
更に、「『殉愛』の真実」なる批判本が発売された。
百田尚樹は、この批判本に対して、かなり執拗な抗議をしたようだが、裁判に訴えられ、しかも敗訴している。
もう二年以上も前の話になるが、批判本が出版された時の百田尚樹の反論がまた情けない。
彼はTwitterに、「やしきたかじん未亡人の過去を暴くなど、犯罪を犯したわけでもない一女性をバッシングするのは怪しからん、狂った正義感」と書いた。

しかし、これはおかしい。
むしろ、恥の上塗りとはこのことだ。
そもそも百田尚樹が、やしきたかじんの未亡人を小説に描かなかれば、彼女は全くの一般市民だった。
しかし百田尚樹によって、「やしきたかじんを献身的に看病した妻」と、美談の主人公に仕立て上げたことで、実態とは違うとクレームを受けたものだ。
ならば百田尚樹は、彼の作品が事実であることを証明しなければならない。
やしきたかじん未亡人は、貞淑で心優しい、小説通りの人物であることを、客観的な証言を集めることだ。
「犯罪者でもない一般市民と貶めている」などと泣き言を言っているようでは、このノンフィクション小説の信憑性は回復されない。
そんなヤヤコシイ小説を書いたのは、百田尚樹にとっては思い出すのも「おぞましい」黒歴史のはずで、早く忘れ去りたい記憶だろうが、今回の雑誌出版でまたも火がついた感じだ。
しかも今回の雑誌の評判がいいほど、皮肉にも、アンチ百田尚樹連中の突っ込みドコロになってしまう。

遅まきながらも、僕は一応公平を期して両方の本を読み比べてみたが、どう贔屓目で見ても百田尚樹は不利だ。
百田尚樹への批判本は、僕が大嫌いな有田芳生が推薦している。
真情的には百田尚樹を応援したいが、この本に関しては甚だ分が悪い。
今更ではあるが、いっそ百田尚樹はこんな本を出版したことを自己批判して、絶版処分にしてほしい。
過ちを改むるに憚る事勿れ!