昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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貴乃花劇場再燃!

ちょうど一年前、当時の横綱日馬富士による、貴乃花部屋貴ノ岩への暴行事件で大騒ぎになった。
責任をとった日馬富士引退後もスッタモンダがあり、結局は貴乃花親方は理事に落選。
貴乃花はその後に相撲協会の告発状を内閣府に提出し抵抗の意思を示していたが、今度は自部屋の力士が暴行事件を起こしたために、告発状を取り下げ。
単なる年寄に格下げされ、「一兵卒」として部屋経営に専念していたはずだった。
 
その貴乃花が、相撲協会へ引退届を提出したとして、一年ぶりにワイドショーが騒ぎ出した。
各テレビ局共に記者会見を前に、引退理由をあれやこれやと詮索していたが、共通だったのは「各部屋はどこかの一門に所属しなければならない」との相撲協会内規が原因との認識だった。
しかし貴乃花の記者会見で明らかになったのは、内規自体ではなく、「告発状の内容が事実無根と認めるように、相撲協会から有形無形の圧力を受けた」ことにあるようだ。
貴乃花は、「事実無根ではないものを、事実無根と認めることはできない」と主張していた。
 
如何にも貴乃花らしい言い方だが、NHK仮屋アナから「それは誤解では?」と質問されると、一瞬答詰まった後に全然違うことを言い出した。
その後弁護士も、「協会からは文書で通告されてはいない」と説明していたので、どうやら相撲協会への不信感から、貴乃花が早トチリ、若しくは深読みした可能性もある。
しかしこの問題がなくても、貴乃花はいずれかの時点で相撲協会を去っただろう。
何故なら、貴乃花にとって八角親方の下で相撲協会で働くことは、あり得ない選択でしかないからだ。
 
貴ノ岩事件は、協会に届け出るともみ消されるとの危機感から、貴乃花がいきなり警察に被害届を提出したことから始まった。
しかし当時の貴乃花は巡業部長であり、自分が先頭に立って事実究明を進めれば、協会のもみ消しなんかできるはずがない。
僕はこの事件発生以降、「これは貴乃花による、貴ノ岩への傷害を理由にした、八角理事長へのクーデターだ」と思い続けてきた。
 
実は僕は、社長の座を巡って幹部連中が、今回の相撲協会貴乃花と良く似た死闘を繰り広げた会社を知っている。
その会社は実力社長が君臨していたが、任期が長くなったので後継者に社長を譲り、自らは会長となった。
その時に常日頃目を懸けていた役員に対して、「彼はワンポイントで、次の社長は君だ」と約束していたらしいのだ。
ところがこの会長が、突然死亡してしまった。
そこからは、現社長派と次期社長を約束されていた役員派の、血みどろの権力闘争が展開された。
結末は、やはり有形無形の権力を持つ現役社長の勝利に終わり、誰もが認めた「仕事のできた役員」は会社を去っていった。
 
相撲協会で言えば、先代の北ノ湖理事長は一代年寄貴乃花を高く買っており、自分の後継者として期待していたし、貴乃花もまた北ノ湖理事長を尊敬していたと言われている。
ところが北ノ湖理事長が突然逝去した後、急きょ理事長職に就任した八角親方は、「空白期間を置かない」ことを大義にすぐに理事長選実施を目指した時に、これに強硬に反対したのが貴乃花親方だった。
しかしこの時もまた、現役理事長の政治力が勝り、選挙の結果八角理事長が正式に誕生してしまった。
貴乃花の悲憤慷慨振りは、想像に難くない。
その後の貴乃花八角理事長への口の利き方は、上司への尊敬の欠片もなかったと言われている。
貴乃花から見れば、実績、貢献度、見識の全てで自分に劣る八角親方など、到底理事長としては認められないし、一代年寄北ノ湖理事長の後継者は、同じく一代年寄貴乃花しかありえない感覚だろう。
 
ただ貴乃花にとって唯一最大の思惑違いは、八角親方の政治力と、自身の人気のなさだ。
確かに相撲取りとしての北勝海、即ち八角理事長の実績は、貴乃花に比べれば大幅に見劣りする。
しかしその風貌からは窺えないが、兄弟子、千代の富士を切り捨てて理事長の座に上り詰めた八角親方は、管理職としての組織運営能力に長けているようだ。
一方の貴乃花親方は、昨日の時点でも尚、何を言っているのか、何をしたいのかが分からない。
唯一力説したのは、「可愛い弟子たちのために断腸の思いで」だったが、これもまた、「そんなに弟子が大事なら、相撲協会を相手に戦え」と言いたくなる。
 
そもそも一時期持て囃された、「貴乃花相撲協会の改革派」なるイメージも、マスコミがでっち上げただけで、本人ですら具体策を提示したわけではない。
貴乃花は「相撲道の復活」と力説していたが、これもまた何のことか分り難い。
しかし仄聞する限り、相撲部屋への拘りから、むしろ古き良き時代の大相撲への回帰を目指す守旧派の印象すらある。
しかしいずれにしても、貴乃花の考えは他の親方連中には全く伝わっていない。
貴乃花一門ですら、理事候補に阿武松親方を選び、貴乃花が獲得したのはわずかに二票。
これでは、仮に素晴らしい改革案があったにしても、絵に描いた餅以下でしかない。
相撲取りにとって最も重要なのは、マスコミ受けでもないし、一般的な人気でもない。
相撲取りからの信頼がなければ、相撲協会の改革なんてありえないではないか。
 
噴飯モノなのは、この際に貴乃花親方は新団体を設立するべきとの、まるで頓珍漢な意見だ。
貴乃花の支持者には、こんな意見の持ち主が複数見受けられるが、新団体を作ったとして肝心の力士はどうする積りだろう。
貴乃花部屋の力士は、運命共同体として行動を一にするかもしれないが、他の部屋からの協力は考えられない。
プロレスにでも転身すれば別だが、相撲を取る限りそんな団体の相撲なんて誰も興味を持たないし、長続きしない。
タニマチだってついてこないので、資金面ですぐに行き詰る。
貴乃花本人も否定していたが、絶対にありえない話だ。
 
大相撲の歴史に名を遺した名横綱だった貴乃花だし、いずれは間違いなく理事長に就任する人物だったはずだ。
それが、格下と思っていた八角親方との権力闘争に敗北したことに我慢できず、準備不足のクーデターに失敗してしまい、行き場を失ったのが残念だ。