昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

いよいよ手術

手術当日。
午前6時、看護婦が本日分の薬を持って来て、今日の手術の段取りと注意事項を説明する。
手術開始は9時。
それまでに用を足しておくこと、下着も全て脱ぎ、前バリだけの手術着に着替えておくこと、らしい。
アダルド映画では必需品らしい前バリだが、自分で使用する羽目になるとは思わなかった。

朝食は抜き。
三時間ほどは点滴だけで、退屈な時間が過ぎる。
8時30分、妻が到着。
「大丈夫よ」とか励ましてくれるが、勿論医学的根拠はゼロ、それでも退屈しのぎにはなる。
時間もオシてきたので、生まれて初めて前バリ着用。
しかし人目が気になり、矢鱈と手術着の前を重ね合わせる。

8時50分、病室に看護婦が来て、「少し早いけど、行きましょうか?」と声をかけてきた。
いよいよ手術だ。
看護婦について手術室まで歩くが、手術室到着直前に「少し緊張してますか?」と質問された。
が、ここまで来たら自分でできることはない。
全て医者任せなので、実は全く緊張していなかった。

手術台に上がると、後は身動きできない。
手術着の前をはだけられて、前バリだけの屈辱的な格好を強いられるが、「今上天皇もまた、同じことをなされたのだ」と、自分に言い聞かせた。
担当医の「では始めます」の声とともに、右手に麻酔を打たれる。
麻酔注射は昔に比べると痛みが激減していて、一本目にチクりとしただけで、後は痛さは感じない。
ただカテーテレルが挿入される時に、右手に圧迫感が発生する。
尤も患者には、今現在一体何が為されているのか、皆目見当がつかない。
ただ手術している医者二人と、データを読み上げているオトコの声、手術器具を渡しているような看護婦の気配を感じるだけだ。

手術開始から30分ほど経過、医者から「患部を検査したが、思っていた以上に血管の詰りがひどいので、カテーテルサイズを大きくして対応する」と報告されたが、当方は、「ハイハイ、宜しく」としか言いようがない。
続いて30分ほど経過、医者の「今から一番重要な作業になります」に対しても、当方は相変わらず「ハイハイ、宜しく」。
そこから小一時間、医者同士の声の掛け合いが続くが、当方は全く蚊帳の外。
その内に鼻先が痒くなってきたので、クシャミでもしたら大変と看護婦に掻いてもらう。
ひたすらジッとしているだけと言うのも苦痛だと思っていたら、二時間ほど経過したところで「手術が終了しました」と言われ、車椅子で手術室を後にする。

直後の医者からの結果説明には、妻も同伴が必要。
医者からビフォー、アフターの写真を見せられたが、ほとんど真っ白になっていた部分にステント導入すると、血液が流れ始めるシーンは感動的ですらあった。
「大変だったが、成功です」と言われ、手術に踏み切って良かったと心底ホッとした。

手術は成功したが、動脈からのカテーテル治療なので、止血が大変だ。
また、手術用に血液をサラサラにする薬を飲み続けていたことも、動脈止血を難しくしていたようだ。
右手の注射跡を、止血バンドで強く締めあげている。
強い圧迫の為に指先がしびれてきたが、絶対に勝手に外さないように念を押されていた。
それを一時間ごとに三度に亘って2ccずつ緩め、3時間後の午後4時半に担当医がバンドを取り去りシビレから解放されたが、更に用心のために二時間は「二時間以上の使用禁止」と書かれた止血テープを装着する。
予定通りに6時半に看護婦が来てテープを取り除いたが、傷口を抑えていたテープの形のままに皮膚が陥没していたくらいだから、こちらもまたかなりの圧力をかけていたようだ。

ここに至ると、心なしか息切れしていた症状が少なくなったような気分にもなる。
一番懸念していた手術の後遺症も、医者によると「直後に出なければ問題なし」らしいので、クリアできたようだ。
しかし、細い血管にカテーテルを挿入し、脂肪分で詰まった患部にワイヤで穴を開け、そこにステントをインサートするなんて、神業としか思えない。
そんな治療が可能になった近代医学に感謝するが、これじゃ人間の寿命が延びるはずだ。
後は、造影剤を早期に体内から排出するために大量の水分をとることと、傷ついた血管治癒に一週間はかかるらしいから、規則的な投薬と、無茶をしない生活が重要になる。