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大人気番組だった「水曜どうでしょう」論

北海道テレビ制作の「水曜どうでしょう」は、当初一介のローカル深夜番組に過ぎなかったが、口コミでその面白さが全国規模で広がり、知る人ぞ知る大人気番組となった。
しかしその面白さ故に、出演者にかかる肉体的負担も半端ではなく、わずか六年、今を去る事15年ほど前に終わったが、今でも再放送が繰り返され、多くのファンに語り継がれる伝説的番組だ。
 
僕が初めてこの番組を見たのは、仕事をリタイアしてすぐの約五年前だ。
当時、仕事はなくなったが、体調はまだ現役状態だったので、日中に何もしないでいると、夜中に目を覚ましてしまう。
するとなかなか寝付けなくなり、ついつい深夜放送を見るような生活を繰り返していた。
そんな時にたまたま見たのが、この番組の最終回「ハノイホーチミン1800㎞縦断バイク旅」だった。
 
初めてみたのが、番組最終回と言うのも何かの因縁。
出演者、大泉洋は他の番組でちょくちょく見ていたが、ミスターこと鈴井貴之は初めて知った。
何より、出演者とプロデューサー藤村忠寿(通称:藤村D)とのやり取り、駆け引きが面白く、一発で大ファンになってしまった。
その後、ケーブルテレビの番組表であらゆるチャンネルをチェックして、この「水曜どうでしょう」を録画しまくった。
また暇に任せてユーチューブも動員して、六年間で放送された大半と、その後の特番のほとんどを見た。
 
伝説のお化け番組となった「水曜どうでしょう」だが、始まった当初の鈴井貴之はローカルラジオDJとして少しは知られた存在で、本業はローカル芸能プロダクション社長だったが、大泉洋に至っては単なる学生アルバイト。
そんな素人起用には異論もあったらしいが、プロデューサー藤村Dの鶴の一声で決定したと言う。
その大泉洋は、今では全国ネットの大人気者になり、映画主演までこなす大スターだ。
鈴井貴之のプロダクションもまた、全国規模で多くの人気俳優を輩出している。
 
しかし繰り返し見た結果、この番組はプロデューサー藤村Dとミスター鈴井によって企画され、大泉洋が主演しているフィクション、即ちヤラセ番組だと確信するに至った。
名物企画のサイコロの旅も、海外ロケも、事前に入念に小道具まで用意されている。
大泉洋にだけは行き先を知らせないことも演出の一環で、全員が藤村Dの描いた台本に沿って番組が進んでいる。
藤村Dの笑いの感性こそがこの番組の肝であり、出演者は全てそれに従って演技しているに過ぎない。
それでも面白いのは、やはりプロヂューサーの企画力、出演者の個性であり、演技力の高さだ。
 
視聴者は、常に刺激を求める。
笑いには免疫性があり、一旦笑いをとれば、次には更に強い刺激が必要になる。
例えば第一回目のサイコロの旅で、最終目的地札幌を目前に、最後のサイコロの目がはるか離れた場所になれば、第二回目の最終場面ですんなり札幌に戻るストーリーでは視聴率は取れない。
列車での旅で、指定席が三枚しか取れず、一番若い大泉洋は自由席かデッキで移動とのシーンもあるが、番組にとってこんな都合の良い話が頻発するはずがない。
この辺は全部藤村Dの思惑通りであり、たまに番組の中でもそんな裏話がバレてしまう会話もある。
やっている当事者たちは、「バラエティ番組なのだから、人気があれば文句はないはずで、ヤラセで何が悪い」との感覚だろう。
一ファンとしても、目くじら立てる話でもなく、そんな出演者の苦労を笑って楽しめばよい。
 
ちょっと気になるのは、最新の特番を見ると、大泉洋もすでに40歳超。
昔の使い走りタレントではなく、今や全国区スターの仲間入りなので、その分、藤村Dも遠慮がちのスタンスになっている。
やはり「水曜どうでしょう」は、大泉洋が理不尽に扱われ、不満をこぼし続ける内容の方が面白いが、今の立場では、そんな昔風のストーリーにはできないのだろう。
現に、満を持して撮影されたはずの最近の「水曜どうでしょう」は、全く面白くない。
人間も人気番組も、引き際が大事で、しかも難しい。