昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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親切なアラビア人?!

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ツェルマット最終日の本来の計画は、ゴルナーグラト鉄道で、マッターホルンの4千メートル地点まで出かける予定だった。
ところがこの日は、朝からあいにくの雨、しかも大雨だ。
「これじゃ、計画中止」と言う当方に対して、妻は「せっかくここまで来たのだから」と諦めが悪い。
しかし雨と共に、マッターホルンの中腹以上は、完全に雲に覆われてしまった。
さすがの妻も、ここまでくるとギブアップ。
予定を少し早めて、イタリアのマッジョーレ湖へ移動することにした。

スイスから列車でイタリア入り。
最初の駅Domodossolaでは、約45分の待ち時間が予定されていた。
重い荷物を持ってのホーム移動は大仕事だが、黒人の駅員がリフトまで案内してくれた。
こんな田舎駅なのに古ぼけてこそいるが、リフトがあるのは助かる。
駅員は親切に「ミラノ行きはこのホーム」と教えてくれ、「時間があるから食堂で待っていろ」とアドバイスする。
そこは日本で言えば、駅構内の雑貨店で、タバコ、食料品、週刊誌などを販売している。
同じ店でロトも売られているし、スロットマシンまで備わっている。
それまでのスイスが、食べ物と言えば、不味い上に高かったので、山を一つ越えただけのイタリアが、安くて美味いのに大いに感激した。

ところが発車予定時間が近づいても、車両の姿がどこにもない。
やむを得ず、重い荷物を引きずりながら、あっちこっちで質問していたら、妙なオジサンが満面に笑みを浮かべて近づいてきた。
「どうした?」みたいなことを聞くので、「ミラノ行き列車が見当たらない」と言うと、「ホームが間違っているのでついて来い」と言う。
ついでに重い荷物を持ってくれるなど、親切なこと、この上ない。
更には「私はアラビア人、日本語を勉強しています」と流暢な日本語をしゃべり始めた。

話好き、世話好きの老人だが、異国では最も怪しい。
どうしても、スリや詐欺師が、困った旅人を騙しているのではとの疑念が消えない。
妻は「好い人」と喜ぶが、こっちはその分、「怪しい」と心配し、話す時も財布をしっかり握っている有様。
そうこうしているうちに、やっとホームに列車が入ってきた。
アラビア人は、わざわざ客席までついてきて、「四人がけの席を二人で使え」とか、事細かく話しかけ、世話を焼くので、「Thank you!」を連発したら、やっと降りていった。

これで一安心のはずだったが、列車がいつまで経っても発車しない。
前後三両の車両の乗客は我々夫婦だけなので、一気に不安感が募る。。
するとアラビア人が、またも我々の車両に乗り込んできた。
「実は予定していた列車は、我々が迷っているうちに発車してしまった。この列車はあと1時間後に発車する。運転手も食堂でコーヒーを飲んでいるから大丈夫」と説明した。
僕が知る限り、ミラノ方面への列車は、この2時間では一本も発車していない。
しかし兎にも角にも、この列車が動かないことには、次の目的地に行けない。
腹を括ってアラビア人に付き合うことにしたが、「この桃を食べろ、洗っているから心配ない」とか、「友達が茨城の笠間にいる」とか、とにかく話題が豊富だ。
「実は私はシリア人、今母国は戦争をしている。私はスイスに住んでいるが、母国が心配だ」とか言われると、ついついホロリとしてしまう。

発車15分ほど前に、アラビア人は「友達が来た」と離れていったが、どうも単に親切で、勉強中の日本語を使いたいだけのオジサンだったようだ。

まるで無事に別れてみると、少なくとも今まで異国で遭遇した外国人の中で一番印象に残った人だった。
あなたにDomodossola駅でめぐり合って、本当に助かりました。
疑ってごめんなさい。
そんな思いだ。
イタリアにもスイスにも、悪い奴もいるだろうが、好い人だっているものだ。

このシリア人お名前は、Salajin Mawasliさんでした。