実は僕は、コーヒーにうるさいオトコだ。
現役の頃は、ドトールコーヒーの大ファンで、最寄りの駅で毎朝テイクアウトして、朝場で楽しんでいた。
引退後は、朝食が終わって一息ついた後、おもむろにミルで豆を挽く。
この時の香りが好きだ。
更に、お湯をフィルター越しに注ぐと、コーヒーの香りが周辺に立ち込める。
この珠玉の瞬間を味わいたくて、毎日コーヒーを飲む。
ところが我が家のミルは、誠に不出来な代物で、ちょっとでも豆のサイズが合わないと、途端に空回りを始める。
そうなると、割りばしか何かでつついて、豆をミラーの刃の部分に押し込むことが必要になる。
一々面倒だし、何よりもカッコ悪い。
そこで、古式豊かなカリタのコーヒーミラーを購入した。
これだと直径15cmほどのハンドルを回転させると、簡単に粉に挽くことができる
本格的コーヒーミラーを備えたからには、本格的コーヒーメーカーも欲しくなる。
モノはついでなので、同じカリタのコーヒーメーカーを注文。
高いものは数万円もするが、家庭で楽しむだけなので1万円もしないもので充分だ。
ここまで来たら、コーヒー豆もまた本格派をとの気分になり、AGFモカブレンドを取り寄せる。
これでいよいよ、本格的コーヒー人生を送ることができる。
実はコーヒーに目覚めたのは、学生時代に発売されたネスカフェゴールドブレンドを飲んでからだ。
例の「違いが分かる」キャッチコピーで、当時はインスタントコーヒーそのものを変えてしまうほどのインパクトがあった。
しかし所詮はインスタントコーヒー育ちなので、実のところは通ぶっているだけで、コーヒーの味そのものが分かっているわけではない。
だからこそ、「コーヒーは香りだ!」と、自分に都合よく解釈している。
コーヒーミルでモカを挽き、コーヒーメーカーで滝れたコーヒーを飲む。
何と、小市民的ささやかな贅沢だろう。