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最終作「男はつらいよ、寅次郎紅の花」を見て

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NHK衛星で放送された「男はつらいよ」全48作が1月27日で大団円を迎えた。
主役の渥美清が、この作品を最後に逝去した事をわかって見ると、病魔に犯された痛々しい演技ぶりに気付く。

先ず、声が出ていない。
役者の声は、作品の質を高める為に大変重要で、特に「男はつらいよ」では、寅の威勢のいい啖呵や、流れるような口上が売りだったのだが、この作品(実は47作でも同じだったのだが)では、明らかに腹から声が出ていない。
いかにも病人の弱々しい台詞回しに終始している。

次に表情に変化が乏しい。
渥美清の、瞬間的に喜怒哀楽も表情を変える事のおかしさ、面白さをほとんど見ることが出来ない。
また、襟を立てたりマフラーを着用したりして、襟元、喉元のたるみや衰えを隠している。
よほど体調が悪かったのだろう、体を使ってのアクションシーンも無理だったようで、渥美清が縦横に動き回るシーンや、名物のタコ社長との格闘シーンも消え失せている。

男はつらいよ」の後半の作品は、満男と泉の恋愛の進捗がメインテーマとなっていたが、これも主役渥美清だけでは、二時間近い映画が撮れなくなっていたのだろう。
今、「男はつらいよ 寅次郎紅の花」を見直すと、まさに渥美清が肉体的限界に至っていた事と、日本を代表する映画シリーズがネタとしても行き詰っていた事に気付いた。

山田洋次監督は、50作で寅のハッピーエンドを考えていたと話していたが、むしろ、「男はつらいよ 寅次郎紅の花」で「寅次郎は永遠の旅人」との余韻を残したまま、主役渥美清の死によってサドンデスで終了した方が良かった。
我々は、フーテンの寅の最後を自由気儘に、自分好みにイメージできる。

それが、日本を代表する映画「男はつらいよ」シリーズへの、神様の思し召しだったのではと思う。