昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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「世界のトヨタ」の大誤算

一昨年、リーマンショックが起きるまでのトヨタは絶好調だった。
その後GMが自滅した為、期せずして世界一になってしまった。
世界のトヨタに死角なし。
日本中の企業が「トヨタに習え」と、競ってトヨタ生産方式を学び、一種の「トヨタ教」が世の中を席巻していた。
07年度に稼いだ利益は2兆2千億円以上。
絶後ではないかもしれないが、空前の利益だった。
それが一転、昨年度は一気に4千億円以上の赤字転落。
今年度も黒字が確保できるか微妙な状況にある。

そしてそのトヨタが、最も評価されていた車の品質でリコール問題に直面している。
アメリカだけではない。
ヨーロッパでも日本でも、世界的規模で様々な品質問題を引き起こし、トヨタの屋台骨が揺らいでいる。
トヨタの車は故障しないから、中古車市場でも高く売れる。
その神話が崩壊してしまった。
訴訟社会のアメリカでは、こんな事でも裁判沙汰になってしまう。
トヨタは、今まさに踏んだり蹴ったりの状況になってしまった。

先般、「トヨタの内部事情に詳しい関係者」(彼らの立場を守る為には、このような表現になってしまうが)の話を聞く機会があった。
彼らは
・当初は、アメリカで発生した「アクセルの戻りが悪い」クレームを過小評価していた。
・「トヨタ車は安全」との神話を守りたかった。
・ところが、予想をはるかに超えてクレームが頻発した為、対応が後手後手になってしまった。
・そして何より、御曹司社長の記者会見のまずさが混乱に拍車をかけた。
と、今の事態をかなり厳しく見ていた。
彼らは、トヨタ社内に御曹司が傷つかないように守ろうとする勢力があり、その浅知恵が事態を悪化していると見ていた。
しかし一方から「そんな取り巻きを選んだのは社長自身ではないか」と指摘されると言葉を失った。
当初、トヨタの釈明記者会見に御曹司社長は姿を現さなかった。
また、御曹司社長はアメリカの公聴会への参加を躊躇した。
いずれも、困難に直面した時のリーダーの立ち居振る舞いではない。
例え取り巻きが「殿、御自重を!」と押しとどめても、トップ自らが血路を切り開かなければならなかった。

トヨタを見ていると、世界一になっても名古屋に拘るユニークな土着性がある。
そしてその集大成が、グローバル時代のこの期に及んでも創業者一族を社長に据えるアナクロ性だろう。
「豊田家はグループの求心力であり旗」とまで崇め奉られる御曹司社長は、今まさにその資質を問われているのだ。
御曹司社長の取り巻きの出来の問題ではない。
むしろ、世界一の車メーカーが、家族主義以前の封建領主様と臣民の様につながっている。
そんな体質が悪い方に出てしまった。
今回の大リコール騒ぎを見ていると、そう思えてならない。

組織は、そのトップの器を超える事はない。
トヨタの将来は、全て御曹司社長の双肩にかかっている。