昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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太ったオンナ

その昔、太ったオンナと仕事をしたことがある。
当初は違ったグループに所属していたのだが、組織変更で同じ職場で働くことになった。
そのオンナ、容貌だけでも人目を引く有名人。
声は大きく、巨体の割には動きが俊敏で、職場中を走り回っていた。
往々にして、そんなタイプの女は仕事ができる。
それが相場のはずだし、当方もそう信じ込んでいたが、実際のこのオンナはまるで逆。

ハキハキこそしているが、全く気が利かない。
事務処理能力の低さは致命的レベルだが、プライドだけは高く、他人にやり方を聞きたがらない。
結果として、月末には常に男性社員が後始末に追われる事になる。
また当時は接待費をコーポレイトカードで支払っていたが、カード会社から取引停止の通知が来た。
調べると、このオンナが支払い処理に手惑ってしまい肝心の期日内に間に合わなくなった為、請求書を破り捨てていた事が判明した。
顧客への請求書も同じ事を仕出かし、期日内の入金がなされず大騒ぎになった。

ただ、いつも明るい。
底抜けに、且つ無性に陽気で、名前を呼ばれると大声で「ハァ~い!」と返事してスッ飛んでくる。
だから誰もが、アタマには来ても「仕方ないヤツだなぁ」と諦めムードだった。
こんなアンポンタンオンナでも、「私に恋人がいなかった時期はない」と豪語するほど不思議にモテたらしい。
Johnと言う外国人恋人の存在も自慢していたが、口の悪い友人は「それは犬に違いない」と陰口を叩いていた。
世の中には「太ったオンナフェチ」もたくさんいるようで、それ専門のお店もあるらしい。
「あのオンナ、デブ専クラブで働けば、間違いなくナンバーワンホステスになる」と太鼓判を押す人も多かった。

ある時、このオンナが、ホストクラブのおニイちゃんに入れあげてしまった。
その分、勤務態度が悪くなり、会社はクビ。
使った金は二千万円ほどとも噂されたが、大金持ちの親父さんが全部支払ってくれたらしい。
この後、会社からは忽然と姿を隠し、一年もすると誰からも忘れ去られた存在となった。

ところが全く偶然に、通勤途中でそのオンナを見てしまった。
見間違うはずはない。
早朝の電車なので、どうやらどこかで働いているのだろう。
個人的には別に興味もないが、それでも一時は一緒に仕事をした仲間なので、一瞬、今何をしているのかと話しかけるべきかとも思ったが、辞め方が普通ではなかったので気を遣って見過ごす事にした。

恐らくは、真人間になってくれたのだろう。
しかし、相変わらずブクブクと太り、両手を横に振りながら悠然と歩く様には、少なくとも旧悪を反省したしおらしさは全く感じられない。
次の職場でも、請求書を破っているのかな。
仕事場では迷惑ばかりだったが、少し気になる太ったオンナだ。