昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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オーナー会社の後継者

仕事柄、オーナー経営者に会う事が多かった。
混沌とした戦後に事業を興し、徒手空拳、己の才覚だけを頼りに、今日まで続く会社を興した人が大半。
人間的にも、仕事の先輩としても、魅力あふれる人達が多く、この人達と知り合えた事を感謝している。

功なり名を遂げたこれらのオーナーが、一様に悩んでいるのが後継者問題だ。
多くのオーナーには、共通項が見られる。
我が子を鍛える為に、敢えて千尋の谷に突き落としてでもと、厳しく臨む人は少ない。
創業者としての筆舌に尽くせない苦労を、可愛い我が子にだけは味わせたくない。
仕事の上ではいつも独力で血路を切り開き、部下に対しては苛烈極まりないノルマを課すにも拘わらず、子供に対してはだらしない程の一般的な親バカぶりを発揮する。

受験戦争を避ける為には、カネにモノを言わせてエレベーター学校に入学させる。
卒業後は武者修行と称して、知り合いの会社に数年間預けるが、預かった側は、「どうせ腰かけなのだから」と厳しく躾ける事はない。
しかし本人とその周辺だけは、「他人の飯を食った」積りになっている。
入社後は取り敢えず、差し障りない部署で部長職くらいからスタート後、トントン拍子で出世、会社の誰よりも若い取締役、副社長へと登り詰めるものの、役職だけは煌びやかだが、一国一城の主として率先垂範出来るだけの実力が備わっていない。

それでも父親はある時点で、自分の目の黒いうちにと社長職を譲って、会長に就任。
「息子を育てながら」との思いはあるものの、どうしても二代目が頼りなく見えて、いつまでも実質的経営者の座を手放せない。
多くのオーナー企業が、代を重ねるごとに弱体化するのは、決して偶然ではない。
息子ではなく娘婿を後継者にする事で、乗り切るオーナーもいる。
息子は選べないが、娘婿なら出来の良いお気に入りを選抜できる。
結果的には、娘婿を後継者にした方が成功確率は高いようだ。

ある会社の若旦那から、今までの支援への感謝と、今後の決意を表明したメールを貰った。
8月1日、彼はそれまで修行していた会社を退社、オーナー会社三代目社長への道を歩き始めた。
この会社は、現社長が創業者の息子で二代目。
社長に至るプロセスは他のケースと似たり寄ったりだが、彼は珍しく傑物息子で、初代よりも事業を拡大していた。
その社長には、子供が娘しかいない。
そこで学生時代から付き合っていた銀行勤めの娘の彼氏を養子に迎え、後継ぎに指名した。
彼は、当初はこんな重責を担うとは思いもよらず、大いに心配していたらしいが、今は「一生をかけて社業発展に努力したい」と書いてきた。

礼儀正しい好漢なので、すぐに「貴方に対しては我々も期待しています」と、当方40年の会社生活で得た、利益を出す為の三原則のアドバイス
仕入を安定させ1円でも安く買う
・現場では1円でも付加価値をつける
・営業は1円でも高く、1圓任眤燭売る
を徹底する事ですと返信をした。

7月末までは普通のサラリーマンだった彼がいずれは背負う会社は、組織で運営されているわけではなく、オーナーの判断一つで大きくもなるが、倒産の憂き目にあうかもしれない。
彼が今から味わう苦労に比べれば、我々の悩みなんてショボイものでしかないだろう。
大荒波への船出を覚悟した彼の将来が、幸多からん事を心から祈っている。