昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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池井戸潤の「下町ロケット」を読みましたヨ!

自慢じゃないが、当方、池井戸潤の単行本は一冊も買った事がなかった。
しかし、文庫本は全部読破しているので、結構な池井戸ファンを自認している。

中でも、「空飛ぶタイヤ」は、最高傑作だと思っている。
ところが、仄聞する限り、この本は直木賞の最終選考で落ちたらしい。
「これ程面白い小説なのに」と思っていた所に、今回晴れて「下町ロケット」が直木賞受賞のニュースが飛び込んだ。
ならば、間違いなく「空飛ぶタイヤ」より面白いに違いない。
と言う事で、大枚1700円+消費税を叩いて、初めて池井戸潤の単行本「下町ロケット」を購入した。

今回の「下町ロケット」のストーリーは、基本的には「空飛ぶタイヤ」と同じ構造になっている。

必死に、真面目に、ひたすら頑張っている中小企業に対して、横暴、横柄な大企業が様々な難癖をつけて来る。
元々バンカーの池井戸潤は、大銀行の描写になると俄然冴えわたる。
今回の銀行も、狡猾そのものに描かれている。
流石に自身の経験に裏打ちされた、「晴れた日に傘を貸し、雨が降ると貸した傘を取り立てる」自分勝手な銀行の対応ぶりには、小説と分かっていても腹が立つ。
そんな破廉恥な大銀行に比べ、中小ながらも意気に感じて主人公を応援してくれる銀行も現れ、一服の清涼剤の役目を果たしている。
生活苦や、仕事そのものに疑問を感じ、一部の社員が社長に反旗を翻すが、最後は社長の人間性に打たれ、自分の行動を反省し、行き詰った事態解決の貴重な情報をもたらす。
最終的には、ハッピーエンドになる事が分かっているのだが、それでも主人公に感情が移入してしまう。
この辺が、作家、池井戸潤の腕の見せ所なのだろう。

ただ「空飛ぶタイヤ」に比べ、今回の「下町ロケット」では、徹底的な悪役がいない。
本来なら一番の敵役が、途中で主人公の味方になったり、敵役の黒幕までが、最後は主人公の為に大企業の社内取り纏め役を買って出たりする。
最後まで悪役に徹するのは、大企業の三下部長でしかない。
その分だけ、「空飛ぶタイヤ」での読後に感じる、大企業の悪辣な企みが暴かれた時の喜びに比べ、「下町ロケット」では、ハラハラドキドキ感が少なく感じてしまう。
面白い小説なのは間違いないが、直木賞まで取った小説なので、やや期待外れだった。

直木賞受賞以来、池井戸潤作品は大変な人気で、本屋には特設コーナーが設けられている。
確かに、どれをとっても読み応えがある、
我が社でも、僕が例の社内図書館に大量に寄贈したので、多くの社員が回し読みをしている。
その誰に聞いても、「空飛ぶタイヤは面白いし、感激した」と話す。

今回の「下町ロケット」の感想読後は今からになるが、果たして何人が感激するのか、彼らの読後感想が楽しみだ。