昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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世間の常識とグローバル化

横並び体質の日本人は、隣が同じ事をしていれば安心する。
画期的なトライアルは、基本的に同調者がゼロのはずで、だからこそ意味があるが、日本人は突出す事を嫌い、不安になる。
斯く言う当方も、典型的な日本人DNAの持ち主なので、似たもの同志が集まっていると心地よい。
実は20年ほど前、ある日突然、当時担当していた商品が国際競争に晒された。
最大顧客の一社が、「来月から海外品を輸入します」と通告して来た。
ある程度の評価期間を経て、使用に耐えると判断したらしい。
影響力の強い会社だっただけに、業界中が騒然となった。
あちこちで陳情団が形成され、上から下まで必死に翻意を依頼するが、対面の担当者は「コストダウンは社命です」と一歩も引かない。

事ここに至っては、撤退か続行か、腹を括るしかない。
現場責任者だった当方、社内で「海外品に対抗出来る所まで値下げする」と提案した。
その代わりに、その会社向けの専用銘柄は全面廃止、ついでに他の顧客にも個別に作り分けていた多くの銘柄を全部一本化した。
そんな程度で元が取れるわけではないが、とにかくここで脇を空けると、次々の国内の陣地を海外勢に切り崩されるとの危機感から、「迫り来る黒船連中は一歩たりとも上陸させない」と、偉く悲壮な決意で社内を根回した。
賛否両論あったがやはりシェアを守ろうとの結論になり、「徹底的に戦います」と顧客に回答した時、相手側は心から安堵の表情を浮かべた。
実は彼らもまた、初めての海外品使用には不安が一杯だったようだ。
上手くしてやられたのかもしれないが、なるほど国際競争とはこんなものかとの感が強く、全く敗北感はなかった。
その時の対面とは、仕事での接点は皆無になった今でも、親しい付き合いが続いている。

当時は、「品質さえ優位なら海外品は恐れるに足らず」的風潮(あるいは、単にそう信じたかっただけかもしれないが、)だったので、かなり先進的な乾坤一擲の勝負手を発した積りだったが、果たして正しかったのか、あるいはドンキホーテだったのか、結構悩んだ。
ところが、ライバル会社も同じ事を始めたと聞いた時、正直言うとホッとした。
かなりの無茶だったが、やっているのが自分だけではないなら、正しい方向に違いない。
情けないが、そんな気がした。

孤立を恐れていれば、他社に先駆ける事は出来ない。
それは分かっていても、たった一人で困難を切り開くのは、勇気と度胸がいる。
狩猟民族のDNAを持つ外国人企業家達は、フロンティア精神で世間の常識に挑戦する。
先だって死んだアップルのジョブズ氏なんて、この典型だろう。
当方は、世間の常識だったら外れはないと安心する。
グローバリゼイションは、こんな日本人が、こんな外国人を相手に戦うのだから、根本からの意識改革が必要だ。
今からの日本人サラリーマン諸君は大変だナァと、老兵は心から同情する。