昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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実は地震保険に加盟していて

今年最大のイベントにして、最悪の悪夢、3月11日に発生したあの忌まわしい大震災の日に、実は僕は、会社を休んで家にいた。
翌日から中国への出張の予定だったのに膝が痛かったので、午前中病院で診察と治療を受けた。
大袈裟なほどに薬を貰い、例え痛みが再発しても、中国で訳の分からない病院に駆け込む必要もない。
ヤレヤレこれで一安心と、大量に残った年休消化と決め込み、午後からはズル休みにした。

その日の午後、NHKテレビでは菅直人への不正献金疑惑が追及されていた。
菅の答弁はシドロモドロ、「最早、悪漢菅直人の進退極まれリ」状況だったが、突然画面が切り替わり「地震警報、地震警報、大きな地震があります。気をつけてください」との速報が入った。
その数十秒後、将に未曾有、マグニチュード9.0の大地震が襲ってきた。
当方、勿論あんな激しい揺れは初めての経験。
その凄まじさは、とにかく筆舌に尽くせるものではない。
庭の樹木も盆栽も、右に左に振り切れそうになっている。
妻は慌てふためいてテーブルの下に駆け込み、先ずは己の身の安全を計ったが、僕は食器棚が倒れそうなのを発見。
生来ケチで欲深な性格故に、非常時のセオリーを無視して、扉を押さえに走った。
あんな非常事態の中で、何で食器を守ろうとしたのか、冷静になった今では信じられないが、とにかくそのお陰で、ガラクタ食器はかなり割れたが、高価なものは結構無事に残った。
二階に上がると、さすがにこちらの食器棚は扉が開きっぱなしになり、お気に入りの源右衛門のコーヒーセットのうち、背が高い水差しが落下して大破、その他にも会社の先輩から貰った由緒正しいワイングラスも粉々、その他あれやこれやが散乱している。

その後余震はあるものの、どうやら落ち着いてきたので後片付けを始めた頃、妻が思い出したように「そう言えば、昨年12月に地震保険に入った」と切り出した。
聞いた途端、欲深人間の目がキラリ!
これで少なくとも、コーヒーセットは再購入できる。
ついでにその昔当方の不注意で傷つけた、源右衛門の飾り皿も合わせて保険金を要求しよう!
コンプライアンス上は些か問題だが、小市民の考える事は、意地汚くもいじましい。
翌週月曜日、保険会社に電話すると、向こうも慣れたもので「ハイハイ、それでは何時何時に査定に伺います。ところで破損状況の写真はありますか?」と聞くので、「残骸は残っているけど、当時は写真を撮るほどの余裕はなかったヨ」と、如何に大変な状況だったかを、身振り手振りを交えて説明。
電話なのでそんなもの見えるわけではないが、当方の必死さは伝わったようだ。
担当者は「それはそうでしょうね」と、アッサリ納得した。
取らぬ狸の皮算用で、「あれが云十万円、これが数万円、あれこれ合わせて云十万円」と、早く来い来い、査定屋さんを待ち焦がれる気分だったが、予定の前日保険会社から電話が入った。

保険会社「査定はどうでした?」
当方 「明日です」
保険 「何がどうなっていますか?」
当方 「高価なコーヒ-セット、皿、ワイングラスが大破、被害額は少なく見積もっても百万円」
と、やや大袈裟に窮状を訴えた。
ところがその時の、保険会社の説明を聞いて驚いた。
地震保険では、幾らの物が壊れたかは一切関係ない、どれほどの量が壊れたかだけを査定するとの事。
「因みに」と言って彼が切り出したのは、「本は落下しましたか、CDは?その他落ちたり倒れたものはありませんか?査定上は、それは全部破損した物になります」と言う。
それまで思い込んでいた先入観とは、全く違う内容だった。
確かに冷静に考えれば、品物の価値を一々査定すると、「これは先祖伝来の」とか「親の形見」とか言い出して、切りがなくなる。
合理的にスピーディに事を進めるためには、機械的な査定にならざるを得ない。
翌日あれこれ落下物を挙げた結果、家財の破損率30%、支払額は保険金の50%の査定となった。
表面的には何の問題もないように見える家屋も、「ひび割れが散見される」との事で、こちらは破損率も支給額も5%の査定。
思いのほかの金額が支払われる事になり、大儲けの気分だった。

ところが、この話には後日談がある。
地震保険で大儲け気分の我が家に、査定会社から「先日の査定には誤りがあったので、再査定となります」と電話が入った。
これは一大事!
せっかくの儲けムードが、一瞬にして凍りつく。
「そんなの、来なくてもいいヨ」と言うが、向うも「規則ですから」と引かない。
仕方なく再査定となった。

しかし驚くなかれ、この査定で、前回は家屋5%支払い評価だったのが、家屋まで50%に格上げになった。
何でも我が家のようなツーバイフォー家屋用の査定ポイントがあり、壁の合わせ目の壁紙が剥離していると損壊扱いとになるらしい。
お陰で全保険額の半分が支給された。
万馬券に当たった気分だが、「しまった、もっと大口の保険に入っておけば」などと後悔する始末で、人間、どこまでも強欲なものだ。
いずれにしても保険加入後、わずか三ヶ月で地震に襲われたのだから、これは間違いなく不幸中の幸い。

ところが先日テレビを見ていると、同じ地震保険でも被災地周辺の住民の場合、柱と壁の一部が残っているだけで住居としては全く使用できなくても、査定は50%損壊らしい。
被災者の奥さんが「どうしてこれが半壊査定なのか?」と抗議していた。
我が家のように住むには何にも問題なくても、被災地のように全く住めなくても、査定上は同じ評価になる。

貰うモノだけはちゃっかり貰っておきながら、こんな事を言うのも偽善的だが、地震保険にも矛盾がある。