昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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シャープに見る企業の栄枯盛衰

日本を代表する家電メーカーだったシャープが、大赤字に陥っている。
最近では、いつ潰れてもおかしくないような報道まで繰り返される。
ソニーパナソニックの収益も似たり寄ったりだが、株価を見ると、シャープは200円台。
ソニーの900円台、パナ550円近辺も、往事に比べれば見る影もない体たらくだが、シャープに比べれば未だマシだ。
識者に言わせると、いずれも原因は、液晶テレビ分野で韓国勢の攻勢に一敗地に見えた結果らしい。
地デジ仮需に現を抜かしているうちに、足元に忍び寄る構造変化を軽視。
いざバブルが弾けた途端、全く売れないテレビが在庫の山となり、経営の根幹を揺らしている。
……と、実際に何ら経営責任のないコメンテーターが、経営者の無為無策振りを厳しく指摘している。

シャープは一時期、家電業界をリードした超名門企業だった。
とりわけ片山幹雄前社長は、
液晶事業をリードし、モバイル液晶事業本部長、常務取締役 液晶事業統轄、専務取締役 AV・大型液晶事業統括 兼 AVシステム事業本部長などを歴任したキャリアに加え、2007年にわずか49歳という若さで社長に抜擢
と、若手辣腕経営者として、飛ぶ鳥を落とさんばかりの勢いだった。

僕は片山前社長の講演会を聞いた事があるが、容姿端麗にして自信満々の口調で、環境の変化と、自社製品の優位性を説明するプレゼンテーションは、なかなかの迫力と説得力があった。
しかし好事魔多し!
得意としたテレビ事業への積極投資が裏目、業績悪化の責任を取らされたように、この6月末に奥田隆司新社長に交代。
新聞情報によると今回の社長交代劇には、台湾の鴻海精密工業との連携を推進した町田勝彦前会長、奧田新社長との、経営再建路線を巡る軋轢が背景にあったらしい。

瀕死だったシャープは、この鴻海の資本参入で一息つけると思われたが、今度は株価が急落し、当初目論んでいた調達金額が激減。
更に8月末、鴻海、シャープの両トップ会談で合意に至る積りが、双方の意見の隔たりを埋める事が出来ず、株価は更に低迷、またも200円以下になってしまった。
まさに悪循環!
世界の亀山ブランドを海外生産とか、希望退職者を2千人募るとか、最新鋭の堺工場を売却するとか、銀行筋も数百億円の追加資金投入とか、様々な方策が考えられてはいるが、シャープの行く末は決して予断を許さない。

しかし一体一年前に、誰がこんな事態を想定していたのだろうか。
こう言うと、必ず「自分はとっくに分かっていた」と称する評論家が現れるが、少なくとも「シャープ危機」がここまで深刻になるとは、どこの誰からも聞いた事がない。
経営者側は、ここまで環境変化が激しいと、判断ミスや遅れが企業の致命傷となる。
シャープに関しては、町田前会長は鴻海精密工業との連携の仕掛け人として、たびたびマスコミに報道されるが、片山前社長は、もはや全く忘れ去られた存在となっている。
株主代表訴訟など食らった日には、経営者もまた、枕を高くしては寝られない。
2千社以上あると言われる下請け先にとっても、眠れない夜が続く。

俗に、企業30年定年説がある。
どんなに優れた企業も、30年も経つと経年劣化が進み、経営不安に陥るとの説だ。
最近ではもう少し寿命が長くはなっていると思うが、それでも超優良と言われた企業でも没落する。
一昔前の長銀、ごく最近では東電なんかがその典型だろう。
長年に亘る「日本型ものづくり」への拘りも薄らいでいる。
日本の高度成長時代は重厚長大型産業が花形だったが、最近は主流が軽薄短小型に変化した。
一時期日本経済を牽引した半導体の時代も過ぎ去り、むしろ、装置を伴わない、知恵が勝負のソフト分野が成長産業と言われる。
しかしこんな産業で養える従業員の数は、高が知れている。

シャープ救済の命綱と期待される鴻海精密工業は、グローバルエクセレントカンパニーだが、労働条件の劣悪さや従業員の自殺の多さなど、何かと世間を騒がせる典型的な成り上がり企業だ。
世界に冠たるテレビだけでなく、様々な新製品を世に出したシャープの凋落は、そんな危険な香りのする企業に再建を委ねなければならないほどに、日本経済が危機に陥っている表れだ。
シャープが抱えたジレンマは、絶対にシャープだけの問題ではない。

居間用に「世界の亀山ブランド」の大型テレビを購入、他にもシャープ液晶テレビを三台所有する我が家にとっては、そのメンテナンスの為にも、シャープ失速は他人事ではない。