昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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銀行名が変わってしまって

最近の都市銀行は、名前から氏素性が分かりにくい。
もう20年近く前の経営危機の時に、合併統合を繰り返した結果だが、調べてみると昔から同じような歴史を繰り返している。
一時期、花形職場で羨望の的だった銀行も、そこに至るまではあまり世間に知られてこそいないが、様々な苦労を重ねていたことが分かる。
そして今、栄光に包まれていた銀行は、日本銀行を除いてすっかり変わり果てている。
バブル崩壊で窮地に陥った銀行を救う法律が成立するまで、日本全体が上を下への大騒ぎだった。
あらゆる産業の米櫃として君臨してきた銀行だが、最近の銀行員は先ず「我が行の構成は」と、会社の成り立ちから説明しなければならない。

1990年までは、銀行は我が世の春を謳歌してきた。
それが不動産規正法でバブルがはじけた途端、一挙に貸し倒れの危機に見舞われ、慌てて貸しはがしに奔走する醜態を演じた。
経営不安に陥った銀行だったが、バブルに踊った無定見の所為だとか、あるいは自ら積極的にバブルを作り出したので自業自得だとか、同情の声は皆無だった。
実際に銀行は、反社会勢力と一緒になって地上げしたり、破滅的な融資を繰り返したりしていたので、銀行員も肩身が狭かったに違いない。
政府への支援を要請した銀行だったが、身勝手極まると厳しい批判が集中。
それでも支援賛成派は、万一銀行が破綻すると産業界全体の資金繰りに深刻な影響が発生するからやむを得ないと主張していたが、国民の大多数は冷ややかだった。
一番多かった反対意見は、銀行だけが経営に行き詰ると税金を投入して救われるのは公平の原則から外れていると、一見尤もらしい理屈を並べていたものの、実は銀行員の給料が高いことへの僻み根性が強かったように思う。

僕は、銀行員の給料の高さに嫉妬したことはない。
僕なんかに比べると、銀行員の働きぶりは苛酷に見えたからだ。
国民に評判の悪い官僚たちもそうだが、銀行員たちは連日深夜まで仕事をしていた。
使命感も大きかっただろうが、元銀行員の池井戸潤の小説では、日常の業務以外にも、顧客の接待や、あるいは己の出世のための社内接待にも忙しい様が描かれており、多くの行員が体調や精神を損なっていたらしい。
僕は、銀行員ってあんなに忙しかったら、高い給料でも貰わなければヤッテラレナイだろうと、秘かに同情していたほどだ。

ところが、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
あの長期信用銀行が、倒産すると予測していた人がどれほどいただろうか。
当時の長銀はエリートの集まりで、文字通り日本のトップクラス(但し学校の成績)がひしめいていたはずだ。
結果的には、破綻銀行も衣替えして再生されたのだが、大半の銀行名は大きく変わってしまった。
三菱東京UFJ銀行や、三井住友銀行は、何となく昔が偲ばれるが、それでも例えばUFJはナニモノか分からないし、三井銀行も、さくら銀行とか太陽神戸とか、ややこしい過去がある。
みずほ銀行とか、りそな銀行とか、それまでの社名とどんな関連があるのか不明。
「晴れた日に傘を貸し付け、雨が降ると取り上げる」と揶揄される銀行だが、日本企業を支えてきた昔日の輝きは薄らいでいる。

池井戸潤も元三菱銀行員だが、数多あった都市銀行の中でも、三菱銀行の行員はとりわけエリート意識が強かった。
我が家の近所は比較的に銀行勤務の人が多いが、三菱銀行の行員は他行の行員を「彼は○○銀行ですから」と、明らかに三菱にあらずんば銀行にあらずとばかりに、一段も二段も低く見下していた。
その所為か、三菱東京UFJ銀行の場合、トップに燦然として三菱の名前が置かれている。
こんなところからも、恐らくは今でも元三菱銀行のエリート意識が抜けていないことが分かる。
因みに三井住友銀行は、中身は住友主体、もっと言えば住友銀行の銀行そのものなのだが、それでも銀行名は三井から始まっている。
尤も英語表示は「SUMITOMO MITUI BANK」と、住友優先でバランスをとっているが、三井系行員は「英語では名前が先、苗字が後なので、三井が苗字で住友が名前です」と、日ごろ行内で旧住友系行員にいじめられている憂さ晴らしで、細やかな溜飲を下げている。

銀行ほどのスケールの大きさではないが、僕もまた不振事業の建て直しのために、ライバルとの統合会社への出向を繰り返してきた。
いずれにしても、ライバル企業と一緒になって生き残りを目指すほど追い込まれた以上、今までの自分たちのやり方に拘るのは、百害あって一利なし。
銀行名も然りで、たかがネーミングだが、統合銀行への姿勢を図る意味では分かりやすい。
その点では、みずほとかりそなの名前を選択して再出発した銀行の方が、統合への心構え、心意気としては潔くて前向きだ。
かってのエリート集団、三菱銀行だって、単独では生き残れないから他行と統合した。
であれば、三菱の名前に拘っている限り、他の銀行出身者の真の協力は得られないものだ。