昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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円安はそんなに良いことなの?

今日の円レートは、96円/$を突破、どうやら100円台が現実になってきた。
僕は最近、ある食品業界の会合に出席したが、そこでのどっかの会社の社長さんの挨拶の中で円レートの話をしたのが印象的だった。

彼は、「皆さんの中の一社でも、最近の円安のご利益に預かっているところがありますか?世の中、アベノミックスを大賞賛しているけど、現に我々の扱う商品は全部値段が上がっている。国民に負担を強いているんですよ。これで更に消費税でも上がったら、売行きは低迷するし景気は悪化の一途。マスコミに煽られて、世の中景気が良くなっているような錯覚に陥っているけど、もっと冷静にならないといけません。大体、自国の通貨が弱くなっていいことなんか、絶対にないんですよ。」と訴えた。

確かに、安倍晋三政権の評判は絶好調だ。
どういうわけか、円安がドンドン進んでいるし、株価は一本調子で上がっている。
日銀もそれまでの政策を一変、インフレターゲットも2%に落ち着いた。
最も懸念されていた庶民の収入の方も、ローソンが率先して賃上げを表明、自動車業界が追随したので、ひょっとしたら物価だけでなく給料も上がるかもしれないような幻想がばらまかれている。

しかし件の社長に言わせると、これもまた厳しく批判する。
「ローソンの新浪剛史なんて、日本経済再生本部「産業競争力会議」のメンバーに選出してもらったお礼で、お先棒を担いだだけ。しかも正社員だけの賃上げなんで、大したコストアップでもない。後の日産やホンダなんかは、円安の恩恵を一番受ける連中なので、少々社員の給料が上がっても、円安の効能の方がはるかに大きい。それに比べて我々は、円安で商売は上がったりだし、社員の給料なんて上げられっこないよ。」

円レートに関しては、高くなっても安くなっても、必ずプラスとマイナスの両面が存在する。
自動車業界は、製品を輸出している産業の代表格で、円安を大歓迎する。
お隣の韓国でも、李明博大統領時代に三星や現代は、大々的なウォン安恩恵を享受した。
しかし韓国民にとってのウォン安は、生活が苦しくなる一方だったので、末期の李明博政権の人気は凋落した。
日本でも、石油関連をはじめとする生活必需品の多くを輸入に頼っている。
この分野では、円安はデメリットしかない。
食品業界や石油関連業界は、製品値上げに踏み切るしかないがそうすると需要が低迷する。
立場が変われば、「円安では何一つ良いことがない」と主張する先の某社長の見方になってしまう。

なのに、急激な円安に対する批判は、驚くほど少ない。
安倍晋三に至っては、「民主党時代は円高修正が出来なかったが、自分は実績として円レートを安くした」と、さも自慢気に答弁している。
この手の話は、よくよく吟味しないと、数年経ったら「こんなはずじゃなかった」と、国民の間に不満が充満することになる。
なのに、安倍晋三は自信満々に振る舞っている。
五年前の頼りなさは消え、最早、自信過剰の感すらある。
安倍晋三の政策に諸手を挙げて賛成、期待している人たちが多いからだが、三年半前の民主党大ブームも一緒だった。
民主党に任せれば、霞が関埋蔵金を炙り出し官僚を退治してくれるので、生活が良くなると期待していたあの頃に、今の民主党の哀れな姿を予測していた人は少ない。
安倍晋三だってそのリスクはあるのに、安倍政権とその政策を批判する声はほとんど聞こえてこない。
そんな風潮を背景に、わずか数か月で安倍晋三の立ち居振る舞いに傲慢さが現れるようでは、この政権の行く末も心持たない。