僕の若かりし頃が、マルクス主義の最盛期だったかもしれない。
僕は不真面目学生だったので、書き出しのこの部分しか読んでいないが、そのときの勢いは何処へで、今や共産主義を名乗る国は、世界でも数国になってしまった。
その切っ掛けは間違いなく、ベルリンの壁が崩壊した事だ。
そのベルリンの壁は、現在ではごく一部しか残っていない。
そしてそこは、多くの素人画家たちの落書き作品が展示されるギャラリーとして、しっかりと名所となっている。
ベルリン三日目は、そのベルリンの壁ギャラリーを見物に行った。
僕の記憶では、実際に写真に撮られている場面のはずだが、この壁の前は観光客が押しかけていて、ごった返していた。
他にも、まさに嗜好を凝らした作品が並んでいて、おそらくは、1km以上の長さになるだろう。
その見物が終わり、駅に向かっている途中で、横を歩いていた妻が急に大声を上げた。
隣のオンナに対して、「財布を掏ろうとした!」と、文句を言っている。
確かに、バッグのチャックが開いていた。
僕も、「Heyyou!」と怒鳴ると、オンナは両手を広げて、如何にもバツの悪そうな表情で、「何もしていない」と訴えている。
すぐにバッグの中をチェックしたところ、財布が無事だったので安心したが、オンナはそばにいた仲間二人と、逆戻りで去っていた。
オンナの手がバッグに入った瞬間に気がついたので、未遂で済んだのが実態のようだ。
ドイツは比較的に治安はいい国だが、それでもやはり、観光客を狙ったコソ泥はいる。
旧東ドイツの企業は、統一後は苦戦している。
フランクフルトからベルリンまでの駅前にも、つぶれた企業の廃屋が立ち並んでいた。
その中でも、大成長を遂げたのがAMPELMANNだ。
元々は信号機の会社だが、赤青ランプの人の形をロゴにした賞品を売り出し、大人気を博している。
その店を探してSバーンを利用、HACKESCHER MARKT駅に行く。
その店は駅のすぐ前にあるが、場所が奥まっているので気がつきにくい。
しかし客は多く、人気の高さが分かる。
そこからホテルに帰る列車で、初めて車内検察を受けた。
ドイツでは、列車に乗る時も降りる時も、駅員のチェックもないし、チケットを回収する機械もない。
タダ乗りヤリ放題と思われるが、たまに検察があり、ばれるとペナルティが大きいようだ。
我々夫婦は、一日チケットを持っていたので、もちろん問題なし。
午後4時に、予約していたドイツ国会議事堂見物に出かけた。
第二次世界大戦の爆撃で燃えたドームを、今風に再興したもので、見物料はタダだが、予約が必要だし、入場時にはパスポート提示とセキュリティチェックがある。
螺旋状の登り坂を登りながら、ベルリンの町を一望出来るので、観光スポットとして人気がある。
しかしこの日のベルリンは、雨模様で寒い。
最上階は天井が空いているので、雨が振り込んでくる。
早々に引き上げ、ドーム入り口に展示されている写真で、国会議事堂の歴史を勉強した。
夜は、やはり昨日と同じアジア料理店へ。
この店は、タイ料理、ベトナム料理と日本料理のチャンポンで、摩訶不思議なメニューが並んでいるが、ドイツ人が溢れかえっているほど人気があるようだ。