何でも長年に亘り、底上げで利益操作してきたと言うから、救いようがない。
その額は、2000億円を超すとも言われている。
社長の後任人選も、難航しているらしい。
何せ今回の事件で、無傷、無関係で済む人が誰なのか、分かっていないようなのだ。
しかしサラリーマンの経験者なら、このような事態は容易に想像できる。
先ず、田中久雄現社長からの、収益目標必達プレッシャーは凄かったらしい。
西田は、「西田が社長を辞める事が東芝最大の危機」とまで言われた、辣腕経営者の評判だった。
しかしその後継者、佐々木則夫とウマが合わず、記者会見の場でお互いの詰り合う醜態を見せている。
佐々木はまた、西田への対抗心から、見せ掛けの収益確保に邁進したと言う。
そんな、「極めて人間的」と言えば聞こえがいいが、実は幼稚な競争心丸出しのアホ臭さが原因で、社内に不正操作が蔓延したのなら、真面目な社員にとっては堪ったものではない。
しかし社長の発言は、軍隊の命令と一緒だ。
社長が不正を厳しく禁止しても、現場がコッソリと悪さをする構図は想像できるが、社長自らが不正を働きかけたら、会社の倫理観はゼロになる。
その結果、各部署が競うように禁断の収益操作を繰り返し、悪事への感覚が麻痺する。
稀にそんな不正に手を染めない、気骨の事業責任者がいたとしても、その人は事業の成績不振でとうの昔に職を追われるか、はたまた閑職に飛ばされているに違いない。
社長の覚えが目出度くて、順調に出世の階段を上り続ける為には、社長からのプレッシャーに応えなければならない。
その為には、チョイと不正経理操作すれば、簡単に利益が確保され、自分の評価が上がる。
隣の事業部を見れば、どこもそんな事をやっている。
多くの事業責任者が、「ならば自分も」と易きに流れ、悪循環に陥った事は想像に難くない。
東芝と言えば、メザシの土光さんを思い出す。
清廉潔白な人柄で、政府から委嘱された行政改革を推進した、伝説的な経営者だ。
そんな社長のDNAは、どこに消えたのか。あるいは最初からそんなDNAは存在せず、我々が土光さん、土光敏夫に抱いていたイメージは、実物とは違う虚像だったのか。
因みに、土光俊夫名言集に、
「私はナポレオンのような人物は、あまり好まない。権力をもってロシアを征服したいとか、アルプスを越えてイタリアを征服したいといった野望を持つのは嫌いです。僕は覇権を好まないんだ。社長といえども、命令するなんてことはできないはずだ。ただ、社長としてはあらゆる計画を必ず実行する責任がある。業績の見通しと、配当を決めたからには、すべて社長の責任となる。決めたことに対しては、責任上私はシビアにならざるを得ない。」
なるモノがあるが、件の経営者たちは、この言葉を拡大解釈したのかもしれない。
それにしても、全社を挙げて不正塗れだった東芝は、果たして再建できるのだろうか?
誰が、どのような手法で、社員の多くに巣食った不正義を払拭できるのだろうか?