ニュースステーションの古館伊知郎が、この快挙を揶揄したと評判になっている。
古館にすれば、「高がお笑い芸人が(俺を差し置いて)」との思いがあったのだろう。
この受賞作を読んでいないので何とも分からないが、今やマスコミ文化人を気取っている古館なら、ヤキモチを焼きたくなるのも理解できる。
しかし僕は、又吉の偉業にケチをつける気は毛頭ない。
お笑い芸人として、それなりに忙しいスケジュールの合間を縫って大量の本を読み、尚且つ小説を書くなんて、なかなかできるものではない。
受賞作を読むまでもなく、その努力だけでも頭が下がる思いだ。
しかし僕は、古館とは違って意味で、又吉の芥川賞受賞に懸念を持っている。
それは、最近の多くの芥川賞受賞者が、晴れの受賞後、ほとんど名前をきかなくなっているからだ。
それにしても2000年以降の芥川賞受賞者で、現在も注目され続けている作家は決して多くない。
よく言われるが、誰も自分の経験をベースにしたり、それまでシッカリと温めてきた企画があるので、一つだけは小説が書けるものらしい。
だから誰でも、作家としてデビューする事は可能なのだが、勝負は二作目、三作目の出来次第だと聞く。
「ジャッカルの日」でセンセーショナルに小説家デビューしたフレデリック・フォーサイスの場合、二作目の「オデッサ・ファイル」で大作家と呼ばれる地位を獲得した。
しかし三作目「戦争の犬たち」以降は駄作のオンパレードで、今の人気は大したものではない。
僕が大好きだったアリステア・マクリーンは、「女王陛下のユリシーズ号」「ナバロンの要塞」と、立て続けに大ヒット作品を発表したが、三作目からはまるで冴えない。
因みに、2000年から昨年までの芥川賞受賞者は、
町田康、松浦寿輝、青来有一、堀江敏幸、玄侑宗久、長嶋有、吉田修一、大道珠貴、吉村萬壱、金原ひとみ、綿矢りさ、モブ・ノリオ、阿部和重、中村文則、絲山秋子、伊藤たかみ、青山七恵、諏訪哲史、川上未映子、楊逸、津村記久子、磯崎憲一郎、赤染晶子、朝吹真理子、西村賢太、円城塔、田中慎弥、鹿島田真希、黒田夏子、藤野可織、小山田浩子、柴崎友香、小野正嗣
だが、果たしてこの中で、着実に大作家への道を進んでいる受賞者は、何人いるだろうか?