少数ながら、経済再生相を自任した甘利明を擁護する人がいる。
今回の不正政治献金問題の一方の当事者、薩摩興業の一色武の氏素性の胡散臭さと、やり方のエゲツナサの所為だ。
確かに甘利明やその秘書とのやり取りを、逐一隠し撮りしたり録音しているのだから、ただ事ではない。
当初は自分の事業を有利にするために、魂胆を持って甘利明に近づき、それなりの投資をした割には成果が上がらないことに腹を立て、一転して陥れようとしたことは想像に難くない。
そもそも利権を求めて政治家を利用しようとした、薩摩興業の一色武の行動に関しては同情の余地はない。
しかし政治家の周辺には、そのような不逞の輩が多数徘徊するものだ。
政治家である以上、そのような不心得者への対処の仕方は慎重であるべきだし、政治家の秘書へも細心の注意を払うよう、常日頃言い聞かせておくことは初歩中の初歩だろう。
ましてや甘利明は、賛否は分かれるもののTPP交渉を一手に引き受けてきた、安倍政権の重要閣僚だ。
身辺整理には人一倍の配慮が必要な、キーパースンだったはずだ。
それにしては、脇の甘さや油断振りは、政治家としても人間としても、情けないほどだ。
そんな甘利明だが、「たかが百万円の金額でこれほどの重要人物を辞職に追い込んでいいのか」との意見がある。
しかしこれはおかしい。
先ず、「たかが百万円」だが、それは表面化された部分だけであって、この手の事件を引き起こす政治家とその周辺には、この数百倍の後ろめたい金額が蠢いていると考えないといけない。
賄賂を持参することで、自分に有利な裁きを求める狡すっからい人間と、「政治にはカネがかかる」ことを言い訳に、この手のカネに無神経になってしまった政治家、政治グループの持ちつ持たれつの関係は、いくら法律を整備しても、なかなか根絶できるものではない。
しかしそれでも、三下政治家ならともかく、日本国の舵取り役にまで上り詰めた政治家なら、自ずと矜持と使命感を持たなければならない。
このような事態を、自分の周辺で考えてみればわかる。
企業にとって、余人を持って代えられないほどの人材がいたとして、その人物が不正行為を働いているのが判明したら、矢張り更迭せざるを得ない。
それは短期的な利益ではなく、企業にとっての在り方の問題だからだ。
甘利明に対して、美人局に嵌められたとの意見もある。
しかしいずれも、真っ当な政治家ならば、先ずは用心するべき罠だ。
残念ながら、身から出た錆!
企業と同じで、政治と政治家なんてそんなものだろう。