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二期会オペラ 「イル・トロヴァトーレ」

最近オペラづいている。
海外旅行する時は、有名どころのオペラハウスへ出かけるのが常だ。
DVDも大量に買い込み、暇に任せて鑑賞している。
 
そんな訳で、昨晩は東京二期会公演の「イル・トロヴァトーレ」を観に行った。
僕は数多あるヴェルディの作品の中でも、この演目が最高傑作と思っている。
演じられるアリアが、揃いも揃って名曲ばかりなので、最後まで飽きることがない。
しかもオペラ初心者にとっては、演奏時間が2時間ちょっとと少ないのも助かる。
ワーグナー作品のように、4時間に喃々とすると、途中で退屈してしまうからだ。
会場の東京文化会館は、八割程度の客の入りで結構混雑していた。
 
オペラが始まると、いきなりスタートの演奏で、ホルンがフカシてしまった。
歌い手として、最初に出てくるのがフェルランド役で、この人物が狂言回しの役。
ところが案の定と言うか、大して上手くない。
「矢張り海外の超一流歌手に比べると数段オツルなぁ」と諦め気分でいたら、続いてディーバ、レオノーラ役の歌手が出てきてビックリ。
日本人歌手なのになかなかの声量で、先だってのMETライブビューイングのアンナ・ネトレプコに比べてもさほど劣っていない。
日本でもこんなディーバの歌を聴くことが出来たと、大いに喜んだ。
 
が、それも束の間、続いてのルーナ伯爵の登場で、全てがオジャン。
これはヒドイ。
人相風体は仕方がないと大目に見ても、肝心の歌が碌に聞こえてこない。
ガッカリしていたが、ジプシー、アズチェーナ役の女性が素晴らしくて、またも気分が高揚。
ところが主役のマンリーコ役の外国人が、全く冴えない。
か細い声で、たまにカスレ気味にもなる。
唯一の外国人歌手なので、さぞや素晴らしい歌声と期待していただけにガックリ!
それでもルーナ伯爵役に比べると、まだマシだ。
 
ハイライト場面、マンリーコ、レオノーラ、ルーナの三重唱では、ルーナの声は全く聞こえない。
歌っていないのかと思ったぐらいだが、字幕には彼のセリフが出ている。
あれじゃ、カネをとって見せるには程遠く、発表会レベルだ。
女性陣二人の獅子奮迅の活躍に比べ、男性陣のだらしなさ、頼りなさだけが目立つ。
しかし観客からは、「ブラボー」と掛け声や拍手が鳴り響く。
周囲がこんなに優しいと、日本オペラのレベルはなかなか向上しないと思ってしまった。
 
それにしても、僕は字幕でストーリーを追うしかできないが、日本人歌手たちのイタリア語は、キチンと発音されているのだろうか?
日本人歌手にとっては、世界的に認められるためには、体格面のハンディだけでなく、言葉の壁を超えないといけない。
尤も海外のオペラハウスは、いかにも金持ち風情の年寄り連中が正装している社交場の雰囲気だが、こちらは場所が上野の所為か、ラフな服装の老若男女が集まっている。
値段もお手頃価格だし、何よりも会場が家から近い。
高額の飛行機料金やホテル代も不要なのだから、なんのかんのと贅沢を言えば罰が当たる。
少なくとも、二人の女性歌手の見事な歌いっぷりを聞くことが出来ただけでも、満足するべきだろう。