昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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リニア談合事件について

大成建設の元常務と鹿島の社員が逮捕された。
仕事をリタイアして丸四年が過ぎたが、今でもこんなニュースを聞くと、暗澹たる気持ちになる。
僕自身が一時期、談合の常習犯だった時期があるからだ。

逮捕された二人は、60歳を超え、会社内ではそれなりの実績を積んできた人物と思われる。
直接的な容疑は、リニア新幹線の談合疑惑だが、同じ疑惑は大林組清水建設にもかけられており、逮捕と在宅捜査の差は、公正取引委員会のリーニエンシー制度だ。
即ち、大林組清水建設は、先に談合の事実を自首したために、「罪一等を減ず」措置を受けたモノだ。
公取委のこの制度は、世の中に蔓延る談合を撲滅させるために絶大な効果を上げている。
談合は、同業者の「赤信号、皆で渡れば怖くない」心理が背景にある。
それは即ち、犯罪者同士の妙な連帯感であり、言葉は適当ではないが「信頼感」でもある。
しかし密告制度は、仕掛けないと意味がないのだから、これを根底から覆す。
先にチクれば無罪、逆に仕掛けられれば罪人となると、それまでの「信頼感」に浸っているわけにはいかないからだ。
我先にと駆け込む事態になるので談合は激減する。そんな公取委の狙いは、確かに的を得たものだ。
昔に比べて、企業同士の談合は激減しているはずだ。

それでも尚、世の中から談合が消えてしまうことはない。
談合はある意味、「出ず、遅れず」意識の強い日本人のDNAでもある。
今回のリニア新幹線談合に関しては、大成建設と鹿島は「単なる情報交換で、絶対に価格談合はしていない」と主張し、徹底抗戦の腹積りのようだ。
価格の打合せはNGだが、技術上の情報交換なら問題ないとの見解で、これにはそれなりに賛同する識者もいる。
ただ問題は、大林組清水建設が、「価格談合があった」と自首したことだ。
この両社には、談合の場は単なる技術情報の交換だけでなく、価格の相談をしたとの意識があったものと思われる。
事実は検察の解明に任せるしかないが、喫茶店で会合を重ね、その中の二社は価格談合したと認めていると、「単なる技術情報交換だけだった」との主張は弱い。
そもそも、本当に技術情報交換だけだったら、お互いの会社の会議室でやればよかった。
それを隠れてコソコソと集まるから、胡散臭いと思われる。
価格談合が独占禁止法に抵触することは、会社員ならだれでも知っているが、それでも長期間に亘って、価格談合は続いてきた。
しかし国際化の時代では、そんな甘っちょろい認識では生きていけない。
各企業とも、コンプライアンスの徹底をうたい、価格談合は全面的に禁止しているはずだ。

それなら李下に冠を正さず!
少しでも疑われるような行動はしないに越したことはないし、仮にそのような場に立ち会えば、すぐに退席するような自己防衛策が必要な時代だ。
セクハラ問題も然りで、女性社員と会議室で話す場合は、入り口のドアは解放しておくとか、女性を入り口に近い場所に座らせるとかの配慮が必要だ。

建設業界では、今回自主申告した大林組清水建設を、「裏切者」扱いする雰囲気があるようだ。
それに対して産経新聞は、社説に当たる「主張」欄で、「社会に対する本当の背信行為は、談合そのものであると認識すべき」としている。
全くご尤もの「主張」だが、密告した大林組清水建設の社員は、死ぬまである種の後ろめたさを感じながら生きていくことになる。
しかも大林組の社員と、逮捕された大成建設の元常務は、大学の同窓生だったらしい。

密告した側、された側に、拭い去れないほどの傷を残した今回のリニア談合事件だが、経験豊富で会社員生活の最終段階を迎えていた連中が、そんな疑いをもたれる場面に参加したことが残念でならない。