カリスマ経営者の右代表格だった、カルロス・ゴーンが逮捕された。
NHKでは臨時ニュースが流れたし、逮捕翌日からは「ゴーン逮捕」報道一辺倒になっている。
世に有名なゴーン改革は、単なるコストカットであり、彼への高評価の裏側に、泣いた社員や下請け業者をたくさん知っているからだ。
その泣いた下請け会社の中に、僕の良く知る会社がある。
そこには、「日産命」とばかりに、日産の為に日々努力していた多くの社員たちがいた。
しかしゴーン改革の所為でその会社はお役御免となり、仕事はライバル会社に集約されることになった。
それまで運命共同体と信じ、必死に日産を支えてきた会社の幹部連中の怒りはすさまじかった。
「二度の日産の世話にはならない、いや、積極的に日産と縁を切る」
全社を挙げて、脱日産での生き残りを図ったために、むしろ日産との接触がタブー視されるほどだった。
ところが、いくら会社トップが力み返っても、現場通しはまた少し違う。
共に何度も苦労してきた仲間意識が強く、日産の現場が本当に困った時には、昔の仕事仲間に協力を求めてきたし、頼られた方もオトコ義を出してフォローしていた。
経営者として世界的な名声を得たカルロス・ゴーンは、そんな現場の苦労を知っていたのだろうか。
今回のゴーン逮捕に関しては、様々な情報が分かり始めている。
理由は未だ明確ではないが、カルロス・ゴーンが所得を隠していたことと、何がしかの公私混同があったことは間違いなさそうだ。
しかもカルロス・ゴーンの場合は、舛添よりも遥かにスケールが大きい。
もはや名声と称賛に飾られていたカルロス・ゴーンなど、地に落ちた偶像でしかない。
僕は、西川広人社長の落ち着き払った記者会見を見て、間違いなく後者、即ち日産側のクーデターと確信している。
カルロス・ゴーンはヤリ手ではあるが、人品骨柄には大変な問題があった。
日産の社員には、日産を立て直したと言われる功績よりも、ケチで強欲な性格が知れ渡り、カルロス・ゴーンの追随者はいなかったはずだ。
でなければカルロス・ゴーンが、自分の身辺に司直の手が迫っていることに気が付かないはずがない。
日産の中では、カルロス・ゴーンは人望を失っていた。
しかしこれは、日産にとっては僥倖だった。
但し日産問題は、単にルノー対日産のバトルだけではなく、フランス対日本の国家レベル問題に発展しかねない。
そうなると、安倍晋三対エマニュエル・マクロンの、首相通しの外交合戦になる。
外交に強いと言われてきた、安倍首相の腕の見せ所だ。
今回のカルロス・ゴーン逮捕劇は、それほどの危機感を持って見なければならない。
小なりとは言え、日産の株主として、僕の私見が当たっていることを念じてやまない。