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インド30万円カーの衝撃!

インドTATA社が30万円の車を発表した。
正確には10万ルピー車なので、今の相場だと28万円らしいが、いずれにしても驚異的な価格で、自動車業界に衝撃を与えている。

インドでは、今でも結構多くの力車(リキシャ)と称する三輪車が走り回っている。
安全面でも大問題だが、排気ガスへの配慮もなく、何より見た目がカッコ悪い上にスピードも出ないので道路渋滞の原因にもなっている。
何にも良いところがない車だが、まだまだ貧しいインドでは安い価格で、始まったばかりのモータリゼーションの一翼を担っている存在だ。

TATA社の会長は、このリキシャをインドから放逐し、インド人でも買える車の開発を悲願として研究してきた。
満を持して発表したのが「NANO」で、その価格が常識破りの30万円なのだ。
但し、コストを切り下げる為に安全面は二の次、三の次。
ボディは衝撃吸収タイプでもなく、後部座席のシートベルトもない。
もちろん、エアバッグなどとんでもない。
あまりの低価格ぶりに、日本勢からは安全性への批判がわき出ているらしいが、しかし、インド人にとっては「これなら買える」と魅力的な価格らしい。

僕は、TATA社会長が「リキシャはインドの恥だ」として、インド人に買える車を開発した心意気には大いに賛成する。
インド最大の自動車メーカーとして、日本車に席巻されている現状を打破したい気持ちも分かる。
今回のNANOの発売で、いよいよインドでも本格的モータリゼーション時代が到来する事になるだろう。

困るのは、実はインドで大量に車が売れると、ただでさえ大問題になっている排気ガスがコントロール不能になるだけでなく、ガソリン需要がさらに増加してしまう事だ。
インドだけでなく、BRIC’sと称される国々では、今まさに爆発的に自動車需要が増えそうになっている。
発展途上国は、二酸化炭素問題などに取り組む余裕はない。
彼らにすれば、二酸化炭素排出規制などは、既に文明の恩恵に大量に浴している先進国の身勝手なわがままでしかなく、ひたすら生活環境の向上を目指している。

TATA社発売のNANOは、先進国の自動車メーカーには価格破壊の恐怖を与え、我々の生活には更なる原油高騰や環境破壊の恐怖をまき散らす。
世界中の人が便利な生活を求め、車の需要は拡大するばかりで、トヨタをはじめとした日本企業は収益を上げている。
しかし便利さの追求は、実は自分で自分の首を絞めている面がある事も忘れてはならない。
そんな矛盾を突きつけたのが、インドTATA社による30万円車NANO登場によるモータリゼーションの進展の様な気がする。