昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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安楽死は存在する!……らしい

死は、生きるもの全てに必ず訪れる。

中国で権勢を極めた秦の始皇帝は、永遠の命「不老不死」を求めてあらゆる手立てを尽くしたと伝えられるが、もちろんながら当の昔に死んでしまっている。
いかな権力者と言えども、死から逃れる事は絶対に出来ない。
ならば一般庶民としては、次善の策として「苦しまずに死にたい」と願うものだ。
拷問されたり、手術で体を切り刻まれ苦しみながら死ぬなんて真っ平。
「気がついたら死んでいた」と、ブラックジョークみたいな安楽死が出来れば良いが、果たしてそれは可能だろうかとの不安もある。

しかし、「経験者」の話では、安楽死は存在する!……らしい。
経験者とは、僕の会社の先輩H氏。
彼は、間違いなく一度は死んだ人間なのだ。
以下はその体験談。

およそ一年半前、彼は東京都某地区でゴルフに興じていた。
五月にしては蒸し暑い日で、同伴競技者の後日談では、「そう言えば練習場で異様に汗をかいていた」らしいが、本人は何ら異常を感じることなくティーオフ。
四ホールパー3をプレイ後、カートの上で、突然まさに「スーッと気を失った」由。
同じカートに乗り合わせていた同伴競技者T氏は、「突然、首がガクンと落ちた」と証言。
まさにテレビで見る「死の瞬間」のようだったらしい。
T氏が「Hさん、Hさん」と絶叫しながら体をゆすぶると、「既に体が冷たくなっていた」(この辺はやや大袈裟と思われる)

ここから、テレビドラマのようなラッキーが重なる。
倒れた場所からわずか1ホールで茶店があった事。
カートに乗ってプレイしていたので、心臓発作後、短時間で移動できた事。
次に、この茶店にAEDが設置されていた事。
この時のキャディが、AED取扱い訓練を一ヶ月前に受けていた事。(後日談だが、このキャディの献身的看護行為は地方紙に掲載された。)
キャディの処置も適切だったが、同伴競技者の一人がいわゆるマウストゥーマウスで必死に人工呼吸をしてくれた事。
茶店が道路に併設されていたので、救急車が横付け出来た事。
都内のゴルフ場だったので、緊急病院が近かった事。
緊急医師が心臓手術に長けた人だった事。
その後の専門病院では、日本でも心臓手術に関しても最も権威なS医師が執刀してくれた事。

これだけの幸運が重なり、何と彼は術後三日目に生き返った。
付き添いの奥さんがトイレから帰ってきたら、何事もなかったかの如くベッドに座っていたらしい。

H氏の心臓はおよそ五分は完全停止したとの事。
これは後遺症が残るか否かの限界時間らしいが、その後に至るも彼の場合、全く後遺症はない。
それまでの暴飲暴食と、不摂生な生活の為、四本の動脈のうち三本は完全に閉塞、残り一本もほぼ詰まっていたとの事で、まさに九死に一生の奇跡だったらしい。

驚くなかれ、彼はその後二ヶ月足らずで職場復帰。
今や、従来通りというより、従来以上に元気に仕事に復帰している。
最初の一年間は、医者から厳に禁止されていたので酒も控えていた。
しかし、一年後の検診でまるで順調な回復を保証されて以降、宴席も次々とこなし始め、また生来の酒好きの為、今や二次会は当たり前にまで回復した。
このような驚異的な回復力は、巷間大いに話題になっている。
H氏のこの経験はあらゆる顧客の興味の的であり、この話だけで30分以上の時間が盛り上がる。

しかし、僕にとって最も関心を持って事は、彼が漏らした、「全く痛みも何もなく、スーッと気を失っていった。あのまま死んでいたら間違いなく安楽死だった」との言葉だ。

安楽死は確かにある!……らしい
現に一度死んだ人間が、体験談としてそう語っている。
僕は、良い死に方を見つけ出した思いだ。