昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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ハッピー定年退職

昨晩は、晴れて定年を迎えたお得意さんの送別会にお声がかかった。
当方、既に仕事上の取引はないが、その昔長年お世話になった方なので喜んで参加した。
予定より30分前に始まり、30分以上延長、合計4時間以上に亘った送別会だったが、たった五名の催し物にしては大いに盛り上がった。

彼曰く、
・会社生活42年、二週間前に定年を迎えられた事が殊の外嬉しい。
・就職当時は名もない中小企業だったが、良い会社に巡り合えた。
・社内外で良い人達と知り合え、感謝している。
・今、後悔する事は何一つない。
と、絵に描いたようなハッピーリタイアメントを強調していた。

ところがやはり、飲むほどに本音も出て来る。
人柄が良く、社外でも多くの人達に信頼されていた彼なので、会社側も当然定年延長を打診してきたらしいが、「今が引き時」とせっかくの好意を固辞したらしい。
リタイアを決めた理由の一つに、自分を採用してくれた先代社長と、合理性や利潤を追求する当代社長の経営方針の差をあげていた。
自分の考えがノスタルジアなのは良く分かっているが、やはり古き良き時代に比べれば、今は信賞必罰や競争原理が強すぎて、自分の居場所が見つからなかったようだ。
「昔は楽しかったなァ、当時の思い出を語れば一週間でも足りない」と、何度も何度も繰り返していたのが印象的だった。

「ところで、今からどうするの?」と、再就職の意思を聞くと、「もう働かない」と明快な答えが返って来た。
先代社長は、貯蓄を勧め、持ち家制度に殊の外熱心だったらしい。
お陰で、早い時期に家を持ち、小銭を溜め込んできた由。
更に不思議な事に、良縁に恵まれず未だ独身なので、生活にはまるで困らないと言っていた。

羨ましいような気がするが、60歳での完全リタイアは如何にも早すぎる。
流石に彼も、「二週間経つとやる事がなくなり、高校野球予選を三日間見に行った。入場料5百円で一日退屈しのぎが出来る」と、些か時間を持て余し気味のようだ。
会社に感謝、同僚に感謝、そして取引先に感謝しながらの定年退職には、大いに憧れる。
ただ、人生はそこで終わるわけではない。
むしろ、会社が命だった人間には、会社を離れた後にくる長い時間の過ごし方が難しい。
趣味の世界も、一年中楽しめるわけではない。

退屈凌ぎの為にも、体が続く限り仕事をした方がいいような気がする。
好漢ハッピーリタイアメント氏に、そんなアドバイスを贈り、送別会はお開きとなった。