盆休みをとって、妻の実家に里帰りをした。
義母が体調を壊し入院したので、そのお見舞いが主な目的だ。
義父が七年前に逝去、義母は現在９４歳で尚、誰の力も借りずたった一人で生活してきた。
その生活ぶりは驚くほど矍鑠としていたのだが、まさしく寄る年波には勝てず。
歩くのもしんどくなったので、伝手を頼って急きょ入院したらしい。
しかし辛いリハビリも元気良くこなし、患者の中では群を抜いて活動的との事。
盆には二泊三日の外泊許可も出て、久しぶりに家族水入らずを楽しんだ。
普段なら食が細い義母も、味気ない病院の料理に比べ、真心一杯の実の娘の手料理を大いに喜んでいた。
ただ入院可能な期間はわずか一カ月。
その後は、今までの様に一人きりで過ごす自信はなくしているので、誰かが面倒を見なければならない。
地元に住む長男夫婦に余裕があれば問題ないが、妻側にも介護が必要な老人がいるので簡単ではない。
僕の方から、義母と実の娘と一緒に生活できるので、我が家に引き取る事を提案した。
しかし、実家から遠く離れているので友人がいない事や、夫婦二人で過ごした思い出の家を出るのを躊躇している。
また昔気質の人なので、長男を差し置いて娘の家に厄介になるのを潔しとしない気持ちもあるらしい。
「そんなくだらない事に拘らず、部屋は用意されているので我が家に来なさい。」と勧めたが、果たしてどんな結論になるのやら？
僕にとっても、家族とは言え義母と一緒に住む事に不安がないわけではない。
今までだったら、風呂上がりは実にだらしない恰好をしていても気にする事はなかったが、義母と一緒となるとそれなりに気を遣わなければならない。
しかしそんな小さなマイナスよりも、義理とは言え縁あって親子関係になった人に、一番気苦労の無い老後を過ごして欲しいとの気持ちが強い。
そしてそれは、実の娘と一緒に過ごす事ではないだろうかと思っている。
幸い僕の方は、長兄が両親の面倒を見てくれたし、二人とも幸せに一生を終えている。
義父は逝去、今僕残っているのは義母だけ。
老人介護は結構深刻な問題だが、僕と僕の家族がそんな難問の解決の一翼を担えれば、それなりに社会貢献にもなるだろう。
何より年寄りと一緒に暮らす事で、今までにない新しい経験や勉強が可能となる。
我々夫婦からの誘いを涙ぐんで喜んだ義母を見て、そんなチャンスだと思った。
