昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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音痴である事

世の中、日本が生みだした世界的な大発明、カラオケが大ブーム。
老若男女を問わず、也きりの俄プロ歌手が多数輩出されている。
我が周囲にも、仕事もスポーツもサッパリだが、事カラオケとなると玄人裸足の能力を発揮する連中がたくさんいる。
「昴」や「マイウェイ」なんぞを、身ぶり手ぶり宜しく歌い上げて、「どうだ、うまいだろう」と、一人悦に入っている。
絶対に一緒には飲みたくない、そんな輩だ。

一方まるで逆に、気の毒な程、歌が下手なヤツもまた存在する。
この手の人間に限って、人前では絶対に歌わない方が良いのに、喜んでマイクを握りたがる。
聞くに堪えないのだが、なかなか注意し難いものだ。
この辺は、全く善意で「オナー」と「オーナー」を間違えているゴルファーへの思いと同じ。

僕の父親がそうだった。
彼はとんでもない音痴だったが、誰からも指摘された事がなかった。
人前で歌うとヤンヤの大喝采が起きるものだから。「自分は歌が上手いに違いない」と思い続けていたらしい。
夫婦で行ったバス旅行で、喜び勇んで持ち歌の「古城」(By三橋美智也)を歌おうとしたが、母親から「やめなさい」と厳しく止められのを「何故だ!?」と悔しがっていた。
初めて歌が超下手糞だと知ったのは、勇敢な友人からの「皆、あんたの歌が上手くて拍手しているのではない。音痴なのを面白がっているだけだ」の一言らしいが、それでも自分が音痴だと認めていたわけではない。
その後も、度々「古城」を歌い、いつも大拍手と大笑いを集めていた。

歌が下手な人は、音が聞こえていないと聞いた事がある。
慶応大のグリークラブに所属し、将来は歌手で身と立てようと思っていた先輩は、仲間に比べ自分が聞こえていない音がある事が分かり、プロになる事を断念したと話していた。
歌う事が上手い人は、耳が良い。
音痴はまるで逆。
因みに、「永遠のサ○リスト」なるファンが多い某女優さんは、ピアノも弾くし、歌も歌うが実は音痴。
鍵盤を叩けば一定の音が出るピアノなら誤魔化せるが、自分の喉で音を出すと怪しげな音程になってしまう。
しかし彼女もまた、我が父親と同じで、誰からも「貴女は音痴」と言われた事はないのだろう。
若気の至りとは言え、何枚もレコードを出しているくらいだ。

僕はと言えば、音感は良い方だと思うが、声に若干問題がある。
拠って人前で歌う事は、極力遠慮する。
どうしようもない場合は、大声を張り上げれば何とか誤魔化しが効く「帰ってこいよ」を披露する事にしている。
しかしいくら熱唱しても、その昔親父が集めた、万雷の拍手を浴びる事はない。
この点では、間違いなく父親を超える事は出来なかった。