昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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円高が止まらない

アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪を引く。
アメリカ頼みの日本経済を皮肉った言葉だったが、今やアメリカが風邪を引き、円高になる。
借金まみれなったアメリカは、何とか与野党妥協の産物でデフォルト宣言は回避できた。
豊かで栄光の国、過去のアメリカを知る人間には信じられない事態だが、とにもかくにも窮地を乗り切ったのだから、円高にも歯止めと思いきや、過去最高値近くまで再上昇している。

この辺のからくりは、経済学者が結果論で解説するのだが、説得力がない。
それまでの説明は、アメリカ経済破綻懸念⇒ドル売り=円高だったはず。
ところが、オバマ大統領が一件落着と宣言しても、市場は「アメリカの債務問題は先送りしただけ」と見ていると解説される。
ホンマカイナ?
いずれにしても、デフォルト回避で一旦収まったかに見えた円高傾向が、その後も続いている。
日本政府も、さすがに介入を検討開始したらしい。

ところで、円高は何故こんなに嫌われるのだろうか?
1$=360円の固定相場だった円が上がり始めた昭和50年頃、当時の会社幹部から「我が社は円が1円上がると一日7百万円損が出る」と聞いた。
ところが調整局面で円安になると、同じ人物が「我が社は1円の円安で毎日4百万円損する」と話す。
どっちに転んでも損をするとは摩訶不思議!と思ったが、要は社員に常に危機感を持たせる為のアジ演説と一緒で、どの部門に焦点を当てるかでプラスもマイナスも出るもののようだ。

多くの企業は、輸入したり輸出したりなので、円レートの振れで一方的に損したり得したりはしないはずだ。
自動車産業は圧倒的に輸出型なので、円高になると必ず収益悪化を喧伝する。
しかし自動車用の原材料は、大半が海外から輸入されている。
鉄鋼や石油化学製品は、日本メーカーが製造していても、そもそもの鉄鉱石や原油は全部輸入しているのだから、メリットもあるはずだ。
企業は基本的に、損になる事は口を尖らして訴えるが、儲けにつながる部分は頬被りを決め込む。

冷静に見れば、一方的に円高を憂う必要はない。
天然資源に乏しい日本は、加工国家としてしか生きられない。
小学校の社会科で、日本はほとんどの原材料を輸入し、それを加工して利益を確保する国家だと教えられた。
ならば、直接的には輸出価格の手取り単価が目減りしても、円高のメリットもあるはずだ。
トータルチャラのはずなのに、円高で困るメーカーの悲鳴だけが報道され、歓迎組は黙り込む。

円レートなんて、将来どうなるのかは誰も分かっていない。
そんな伏魔殿の世界に一喜一憂する事なく、日本全体では功罪相半ばと割り切っていた方が、精神的にも救われる。