昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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若者は、正義漢の方がいいけれど

某年某月。
僕は、ある地方都市の顧客を訪問した。
その顧客はその町では唯一最大の会社で、日本中で知らない人は極めて少ないほど有名だ。
駅前にはいつも数台のタクシーがいて、「○○」と、頭文字だけで話が通じる。
ところがその日に限って、タクシーが一台もいない。
既に先客が一組待っているので、僕は二人目。
すぐ後ろにサラリーマン風の若者が一人、やたらと時間を気にしている。
続いて、いかにも偉そうな上役と課長風情の二人組みが並ぶ。
だんだん列が長くなってくるが、肝心のタクシーが戻ってこない。
後ろの若者は、足踏みをしたり、時計を見たり、全く落ち着かない。
恐らくは会議の時間が迫っているのだろう。

そうこうしていると、ようやく駅まで客を送ってきたタクシーが一台現れた。
しかしそのタクシーは、駅前でいつも並んでいる会社のものではない。
縄張りがあって、恐らく客を乗せる事は出来ないはずだ。
しかしそのタクシーに、二組後ろに並んでいた偉カツと課長風情が走りよって乗車しようとする。
タクシーの運転手にとってもオイシイ話なのですぐに商談成立だが、先頭に並んでいる二人組みにしてみると面白くない。
小さな声で不満を漏らした。
とその時、後ろの若者が抗議の声を上げた。
「ちょっと貴方達、何を考えているんだ!皆が並んで待っているじゃないか!」
その口調が鋭く厳しかったので、さすがの厚かましい偉カツと課長風情も乗車を躊躇。
運転手も「では列の一番前の方を」と心変わり。
置いてきぼりを食った厚かましい二人組みは、バツが悪そうにその場を立ち去って行った。

それから10分以上経って、やっとタクシーが一台戻ってきた。
後ろの抗議若者を見ると、相変わらず時計を気にしている。
「○○の方だったら、ご一緒にどうですか?」と声をかけると、「ぜひお願いします」と喜ぶ。
車中で話を聞くと、顧客との打合せの時間が迫っていたので気が気ではなかったらしい。
そんな気分だったので、マナー違反の年寄りに我慢できなかったようだ。
目的地で料金を払おうとしたので、「時間がないのなら、どうぞお先に。料金は当方が支払っておきます」と、正義感の強い若者に敬意を払った。

これにて一件落着、いい事をした後は清々しい。
の積りで受付で待機していると、件の厚かましい二人組みがアタフタと駆けつけてきて、工場長室に飛び込んで行った。
どうもこの二人組みは、○○会社の社員のようだ。
そうすると、あの正義漢の若者は、自分の会社の偉いサンを面罵した事になる。
若者にとっては、顧客との約束の時間に間に合ったし、タックシー代は只になったが、ひょっとして社内で二人組みとで顔を合わせると、気まずくなってしまうのではないだろうか。
彼の将来が、少し心配になってしまった。

世の中、正しい事をしても、結果も正しくついてくるわけではないものだ。