昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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電車の中で

都市部のサラリーマンは、いつも満員の通勤電車で会社に向かっている。
この混み具合は殺人的で、定員の倍以上の乗客が詰め込まれていると、蒸し暑い日には酸欠状況になってしまう。
こんな事をやっていると、会社に着く頃にはかなりのエネルギーが消費されているはずだ。

僕は、電車で揉みくちゃにされるのが嫌で、家を午前6時に出る。
この時間はまだラッシュアワー前なので、電車の中も比較的余裕がある。
会社到着は、およそ一時間後の7時10分ころ。
いつも一番乗りで、部屋の電気と空調をつける役目を果たす。
無論そんな早く出社する必要はないのだが、これだと最初から座れるし、途中乗り換えの時間ロスもない。
年をとったら、朝早くから起きるのが全く苦痛ではなくなった。
どうせ目を覚ましているのだから、家で所在なさ気にウロウロしているよりも、さっさと出かける方が家人にかける迷惑度が少ない。

ゆっくりと座って、やおら前日録音したNHKラジオ英会話の勉強を始める。
もう10年近く続いている、出勤における我がマニュアル的な所作振る舞いだ。
いつも同じ電車で、いつも似たような席に座るのだが、隣近所は似たようなブサイクで風采の上がらない中高年サラリーマンばかり。
まるで合わせ鏡の見るような日が続いていたが、今日は珍しくうら若い女性が横に座った。
彼女はI-Padで音楽を聞いていたが、そのうちにウツラウツラを始めた。
やはりこの時間に電車に乗っている人たちは、基本的に睡眠不足なのだろう。

しばらくは、頭が揺れる程度だったのに、次第に当方に体を預けて、本格的に寝込んでしまった。
同じ経験のある人なら分かると思うが、他人に寄りかかられると実際以上に重く感じる、
しかも大した事でもないのに、不思議と不愉快な気持ちになる。
肩で押し返すと、しばらくは揺れているが、そのうちに叉ももたれ掛かってくる。
その都度、さも迷惑気に押し返す状況が続いた。

電車の中で女性が、まるで見ず知らずの他人に体を預けて寝込むのは、恐らくは世界中探しても日本人しかいないだろう。
一緒に電車に乗った外国人から、「あれは街娼が客を誘っているのか?」と質問された事がある。
彼らには、それほど理解不能な態度だが、日本ではごく普通に発生する。
これは日本人が、無防備に隣の人を信用しているからにほかならない。
我々は、隣の人が自分に害を加えるとは思っていない。
電車の網棚にカバンを置いたまま眠り込んでいる人がいるのは、日本では当たり前だが、海外では所有権の放棄とみなされ、すぐになくなってしまう。
第一、電車に網棚などない。

海外では、電車に乗るのは緊張する。
今では治安が回復しているニューヨークでも、地下鉄に目つきの悪い集団がいると、持っている荷物をしっかり抱え込む、
日本でもスリや痴漢はいるだろうが、海外のように目を離すと荷物がなくなる被害は少ない。
これは日本の素晴らしい一面だが、その結果平和ボケ民族になってしまうマイナス面もある。
隣のオネエサンは、散々僕に迷惑をかけながら、自分の降りる駅の直前で突然目を覚まし、何事もなかったように席を立った。