出張で某田舎町に来た。
度々訪れている町だが、いつもの定宿が満室で取れない。
やむを得ずインターネットで、名前のカッコ良さに惹かれて初めてのホテルを予約した。
例えて言えば、松山の「坊ちゃんホテル」、仙台の「伊達政宗ホテル」みたいなネーミングなので、さぞかし魅力的なホテルかと思いきや、地図を頼りに近所を探し回っても、見つからない。
そこら中で聞き回った挙句、やっとのことで見つけたが、そこは既に目の前を気がつかずに通り過ぎていた。
駅から近いだけが取り柄の、完全に名前負けのシャビーでチンケなホテルだった。
まぁ、見過ごす程度のホテルだから、設備にも満足できるはずがない。
フロントで「美味いラーメン屋は？」と聞くと、「この周辺にはありません。１０分ほど歩いた繁華街にだったらあるかもしれません」と、甚だ頼りない。
確かに、周辺には何もない。
チェックイン手続きの間、「こんな所じゃ退屈だろうなぁ」と暗い気持ちになったが、フロントのお兄ちゃんが「お客様、本日は有料放送がタダのサービス付きです」と、意味有りげな笑顔で説明してくれた。
「オォ、ラッキー。最新の洋画でも見よう」と、部屋に着くや否や早速テレビをつけると、有料放送は三局あるが、全部アダルトばかり。
仕方なく数分見たが、それだけで全くの興味喪失。
どれもこれも、まるでブサイクなオネエちゃんが、ひたすら喘ぐだけで、まるで演技にもなっていない。
通常ならこんなバカ放送を見るのに千円もかかるなんて、およそボッタクリ以外の何物でもない。
せっかくのホテルのサービスだったが、「こんな番組、アホラシィ」と、すぐにチャンネルを普通の地上デジタル放送に切り替えてしまった。
僕だって、偉そうは事を言えた柄ではない。
若かりし頃は、こんな有料放送を喜んでみていた時期がある。
しかし人間ができてきたのか、あるいは精力が減退したのか、最近はとんと関心がなくなってきている。
まるで「久米の仙人」みたいな、枯淡の境地に至っている。
その所為か、勿体無くて、馬鹿らしくて、金を出してまでアダルト放送なんか見る気にならない。
僕は、ポルノだって同じことだと思う。
アメリカではポルノ解禁で、町の映画館でX-Rated映画を上映しているが、客はほとんど入っていない（らしい）。
あんなの、隠すから見たいのであって、オープンになると却って敬遠してしまうものだ。
一部には、青少年への悪影響を指摘する声もあるが、ネット社会は既にまるで無法地帯。
ポルノに近い場面を、簡単に見ることができる（らしい）。
表現の自由だの、七面倒臭い話じゃなくて、今やポルノ禁止自体が有名無実になっている時代なのだ。
だからいっそ、ポルノなんて解禁してしまえばいい。
暫くは珍しがって客が集まるかもしれないが、アッという間に全員が飽いてしまうに違いない。
否定的な意見も多いだろうが、その道のプロだった経験者の僕が言うのだから、絶対に間違いない。
