昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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田植えの風景

傍目にはどうにも徘徊としか見えないだろうが、本人はウォーキングと称して歩き回っている。
老いた身ではあるが、それでも五感で季節を味わうことが出来る。
今は、暑からず寒からず、まさに絶好の日よりだ。

世間はゴールデンウィークの喧騒に塗れているこの時期は、百姓にとっては大事な田植え作業を終えないといけない季節のようだ。
早朝、農道を歩いていると、農民たちが田んぼで田植え作業に勤しんでいる風景を見る事ができる。
一面に水を張った田んぼに、農家の男衆が見事なコントロールで苗を投げ分ける。
すると、早乙女たちが一斉に苗を植え付ける。
直線的に苗が植え終えられた麗しい光景の中、畦道で家族揃って、お茶におにぎりの昼食。
田植え歌でも聞こえてきそうな長閑な景色を見ると、日本人に生まれてよかったと痛感する。

なんて、昔懐かしい田植え風景など、今やどこにもない。

実際に田んぼで働いている老若男女の農民の中に、若者の姿はほとんど見えない。
腰が曲がったような老夫婦が、文字通り手を取り合いながら、田植え機を操って苗を植えている。
この農機具は、農協を通じて農家に売りつけられたものに違いない。
田植え機の他にも、ヤレ草取り用、収穫用、耕運機、トラクター等々、様々な農機具が開発されてきた。
農作業は楽にはなったかもしれないが、その分農家の負担も増えている。

水を張った田んぼに、一列に並んで植えつけられた稲の苗。
見た目にきれいなだけでなく、最近何かと問題視される、地球温暖化防止にも大きな貢献があるはずだ。
しかし肝心の田んぼは狭く、且つ形も歪だ。
舞台は、猫の額のような狭い田んぼ。
登場人物は、後継者不足に悩む老夫婦。
道具は、借金だらけで購入した農機具。
そんな田植え風景を見ると、これでは日本の農業の将来は真っ暗だと思ってしまう。
こんな日本の農業が、諸外国の大規模農業に勝てるはずがない。

テレビに出演し、「美味いコメをつくれば、外米なんか怖くない」と、元気いっぱいの農民もいる。
しかしそれは、ごく一部だろう。
大半の農家は、政府の支援がなければ、農業を続けることが出来ない。
日本人にとって、主食のコメを輸入に頼るのは危険だ。
危機管理上も、コメの自給率を上げていく事は喫緊の課題だ。
しかし現実の田植え風景からは、そんな深刻な問題解決の糸口すら見えない。
梅雨時の日本を代表するような田園風景も、日本人が愛してきた日本のコメも、近い将来には壊滅してしまうのではないだろうか。

TPP交渉でも、コメの自由化は絶対にタブーになっている。
それはそうだろう。
安倍晋三首相の言う、美しき瑞穂の国、日本を守る為には、日本でコメを作り続けるしかない。
どんなに外圧が掛ろうと、国内外でどんなに自由化が求められようと、コメだけは、絶対に輸入禁止
実際に行われている田植えの現実を見ると、妙に保守、反動になってしまう。