昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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中谷巌の講演会

某所で中谷巌の講演会に出席した。
このオトコ、中谷巌(なかたに いわお)は三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長、多摩大学名誉学長、一橋大学名誉教授、一般社団法人不識庵理事長、ハーヴァード大学経済学博士、オーストラリア国立大学名誉法学博士等、絢爛たるプロフィールを有するが、突然2008年に、それまでの主張を捨て去り、市場原理主義を批判した事の方が有名。

題目は「日本の復元力について」で、日本人はもっと自信を持てと力説していた。
日本は、古来から異民族に一度として征服された事のない稀有な存在だが、第二次世界大戦敗北後、マッカーサーの統治時代七年間で徹底的な自虐思想を植え付けられた
戦後教育は、いかに日本がアジアでひどい事を繰り返したかを教え込んだのだが、これこそ日本人の誇りを崩壊させるアメリカの戦略そのもの。
しかし日本は戦後の廃墟から立ち上がり、23年間でGNP世界二位にまで復興を遂げた。
これは、明治時代に日露戦争に日本が勝利した事に匹敵するような奇跡だ。
その間、米ソが冷戦だった為に、アメリカは日本バッシングが出来なかったが、ソ連崩壊を機に、「グローバル化」の美名に隠して、それまで日本の強みだった系列取引やメイン銀行との強い結びつきに対して、アメリカからの攻勢が強まった。

日本は非階級社会であり、識字率の高さ、高度な庶民文化、治安の安定等、世界に誇る事が出来る下地がある。
因みにヨーロッパは征服民族が被征服民族を奴隷にした典型的な階級社会、アメリカは黒人を奴隷にする事で疑似階級社会を作り上げている。
異文化、異民族に対して征服、支配する海外に比べ、日本はそれを受け入れ自分の物に取り込んできた。
また海外の文化は、オペラにしても絵画にしてもブランド品にしても、全て貴族が楽しむものであり、一般大衆には無縁なのだが、日本では中流層の庶民が伝統文化を作り、ブランド品を購入する。
伝統と独自文化を誇るヨーロッパは、実は身分が固定化された階級社会であり、木下藤吉郎的な成り上りが極めて難しい。
しかも日本人には、お天道様が見ているから悪い事をしないとの自己規律がある。
こんな民族は世界中探しても、日本人しかいない。
だから海外カブレなどせずに、もっと自国民を信用、自分達のやり方に自信を持って事業を進めるべきだ。

また製造業では、一人一人の作業員の責任感の強さこそが日本企業の武器であり、パートや派遣労働者ではこの素晴らしさを維持できない。
目先のコストに拘るのではなく、社員と企業が一体化した日本型経営を進めるべきだ。

中国は、漢民族と北方の騎馬民族が血で血を洗う覇権争いの中で、負けた側は一族郎党全てが殺戮される歴史を繰り返してきた。
だから、中国人が隣人を信用するのは絶対に不可能だが、日本人は一度でも酒を酌み交わすと十年来の友人のようになってしまう。
向こう三軒両隣、日本程安心できる国はない。
現に日本を訪問した外国人は、日本の清潔さ、礼儀正しさ、親切さ、几帳面さを激賞する。

ザッと、以上の様な事を一時間半に亘って講演した。

確かに日本には、日本がいかに駄目な国かを主張するのがインテリみたいな、妙な風潮がある。
主として、戦後マスコミと学校教育が作り上げた虚構だが、実はそんな自己否定が世界的には却って日本の国益を損ない、企業の競争力を弱体化させている。
中谷巌は、そう主張していた。

因みに最近のNHK、「日本は何故太平洋戦争に突入してしまったか」特番があったらしいが、ここでも日本否定のオンパレードで、諸外国が、植民地政策の一環としてアジアへ侵略していた当時の国際情勢分析は皆無。
「そっぽど、NHKに抗議しようかと思った」と憤っていた。

因みにフォードがホンダの工場を訪問した時のエピソードが面白かった。
ラインの上にロープがあるのを不思議に思ったフォード社の幹部が「これは何だ?」と質問、ホンダから「少しでも異常を発見した工員がロープを引くと全ラインが一斉にストップして異常点検する為」と答えられて吃驚仰天したらしい。
無論、チャプリンの「モダンタイムズ」以来、単なる機械部品として扱われるアメリカの工員に、ラインストップの権限など与えられるはずもないが、もしもアメリカで同じ事をすると、疲れただけで工員はロープを引っ張るのではとの感想を述べた由。

「そうだ!日本はもっと自信を自国に持たないといけない!」
中谷巌の講演を聴いて、そう思った。