昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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リタイア後の生活

3月初旬で仕事から解放される。
自分ではとっくに決めていたことだが、渡世の義理で1月末までオープンできなかった。
今は心晴れ晴れで、挨拶回りの日が続く。

顧客は全国に散らばっているので、皆さんに義理を果たすにはもう一か月はかかる。
通い詰めた顧客の場合、最寄の駅から顧客の会社まで、見慣れた光景が目に焼き付いている。
しかしそれも、これが最後で二度と見る事はないと思うと、柄にもなくついつい感傷的になってしまう。
ソコソコの長く付き合った顧客が多いが、何せリタイアする身なので、送別会の類は一切お断りしている。
しかし中には、「水臭いじゃないか」と、宴席が用意されたりする。
有難い配慮なので遠慮なくご馳走になるが、その都度飲み過ぎ、食べ過ぎになり、結果として体調が思わしくない。
それでも、最後の働き場所で多くの顧客に出合い、彼らの滋味あふれた人生哲学に遇いまみえたのは本当にありがたかった。
人間至る所に青山あり!
七年前に新たに担当した仕事だったが、改めて顧客や仕事の同僚に感謝の気持ちで一杯だ。

挨拶に赴くたびに、異口同音に顧客から「これからどうするの?」と訊かれる。
その都度、「晴ゴルフ、雨読です」と答えているが、正直言うと、何をどうしていいのか分からないでいる。
朝何時に起き出そうか、その後何をするのか、全く実感がわいてこない。
早朝散歩を日課にしている人も多いが、単に歩くだけなんて面白いはずがない。
読書と言っても、一日中机にかじりついている訳にもいかない。
話し相手がいないと無性に寂しくなるらしいが、仕事仲間がいなくなれば話し相手にも事欠く。
平日昼間のテレビは、悉く全くくだらないので、見る気もしない。
「では趣味のゴルフを」と考えるが、ホームコースでのゴルフがメインになって以降、已むに已まれぬ接待ゴルフなんてつまらないと、小馬鹿にしていた。
ところが実はそんな接待ゴルフでも、実行の日まで当日の天気を気にしたり、自分の健康管理に気を遣ったり、実に多くの刺激を受けていたことに気が付いた。
「天気が良ければいつでもできる」となると、ゴルフに対しても興味を失うのではないだろうか。
先にリタイアした後輩は、わずか一か月でやる事がなくなり、慌てて士官運動を繰り返した結果、三か月後には何とか仕事にありついたが、本人以上に奥さんが喜んだと述懐していた。

一般的には年寄には刺激的な生活は不向きと考えられているが、逆に刺激がなくなればボケてしまう。
生きていく上では、若かろうと年寄だろうと、適度なストレスは必須だ。
しかし刺激の場合、ちょうど良い程度に調節するなんて出来るはずがないので、社会と関わりを持てば、嫌でも世間の荒波に巻き込まれ揉みくちゃにされてしまう。
だから仕事に就いている間は、ストレスフリーな生活に憧れ続けていたが、実際にそれが可能になった途端、一転してストレスの必要性が分かる。
我ながら自分勝手だが、この世もまた全く皮肉なものだ。