昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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社長の責任の取り方

マルハニチロと言うからには、マルハ漁業と日魯漁業の合併会社なのだろう。
水産関係の会社では、最大手の大会社だ。
その子会社「アクリフーズ」の冷凍食品に、農薬「マラチオン」が混入された。
日本中が大騒ぎになった事件だが、かなり早い時点で社内犯行が確実視され、犯人逮捕も時間の問題と言われてきたが、25日土曜日に同社の契約社員が逮捕された。
本人はどうやら観念して、容疑を認めたうえで「家族や関係者に迷惑をかけた」と謝罪しているらしいが、一番のとばっちりは、マルハニチロホールディング久代敏男社長と、アクリフーズ田辺裕代社長だろう。
この二人は、「社員が犯行に及んだのが事実なら」と前提付きだが、3月末での引責辞任を発表した。
経営トップの責任の取り方としては当たり前だろうが、やはり経営者はこうあるべきだ。
事件そのものは悲劇だが、二人の態度には潔さを感じる。

直截犯行に及んだ契約社員を雇用していたアクリフーズ社長ならともかく、親会社のマルハホールディングの、しかもそのトップの社長が、こんな事件の詳細に関わっているはずがない。
普段なら子会社にとって、親会社は遥か遠い存在だ。
しかもその社長なんて、顔も見たことがない雲の上の人だ、
しかし一人の不良社員が仕出かした事件でも、所属会社だけでなく、その親会社社長の責任にまで追及が及ぶ。
社長たるもの、何か事が起きれば責任をとらなければならない、そんな因果な商売なのだ。
アクリフーズで農薬混入問題が発覚した時の危機管理体制には、批判が多い。
問題発生から回収手配まで一か月以上も時間を要したり、密かに撤去しようとした事も分かっている。
この辺は、法令遵守意識の欠落した企業の典型的な対応ぶりだ。
その反省からか、マルハニチロホールディングとアクリフーズ社長は、社員が犯人として逮捕された直後に、自らの引責辞任に言及したのだろう。

今回は、成果主義給与体系への移行で賞与が減った事への不満から、犯行に及んだと見られている。
そんな職場環境を作ってしまったのは、その制度を立案した人事総務の浅知恵なのだが、その制度を最終採用したのは社長判断になる。
だから全ての責任は、社長が採らざるを得ない。
しかし横断組織ごとに責任を持った事業運営体制が実施される企業では、経営方針の実践は現場の役割であり、社長が現場社員の不満まで事細かく把握できる体制になっていないし、社長にはそんな時間的余裕もない。
利益を追求しなければならない会社である以上、楽しい事は少ないし、様々な矛盾や問題点を抱え、日々それを解決しながら経営がなされている。
そんな問題点が表沙汰にならない限り、会社は上手く行っていると思われるし、社長の経営判断は賞賛される。
しかし何かの拍子で一旦事件が起きると、その責任は社長にまで波及してしまう。
だからこそ、社長になるのは、全ての責任をとる覚悟をする事なのだ。
社長に就任した僕の先輩は、ある問題について相談した時、明白にそう言い切った。

いくら責任をとって社長が辞任しても、それだけで犯罪がなくなると思う人はいない。
しかし社長が変らなければ、それまでの方針を見直して新しい考え方や制度を導入する事ができない。
事件の責任をとって社長が辞任するのは、問題解決のための第一歩なのだ。
新体制では、何故農薬混入を防げなかったのかの原因究明と、今後の対策に徹底がなされるだろうが、その場合、新社長が経営方針で掲げる業務の優先順位が一番大きな影響を持つ。
数多いる社員の不満を根絶する事は不可能だが、それが犯罪に至らないような予防策で未然に防ぐことが出来るし、また防がなければならな。
食品会社である以上、消費者に安全な商品を供給する事以上に重要な使命はない。
その為には、法令遵守が全てに優先する企業風土が定着するか、将に新社長の手腕が問われる。