朝食後、10時ホテル出発の積りが、間違えて一時間早くレオポルド美術館を目指す。
徒歩5分ほどで到着するが、人っ子一人いない。
10時開館なので、美術館前の広場で休憩したが、不思議にもWiFiでインターネットにつながったので退屈はしない。
この美術館は、地上五階、地下二階で、オーストリア出身画家の出世頭、クリムトの若い頃の作品がずらりと並んでいたが、彼の有名作品「接吻」とはまるで趣が違う。
地下1階は、同じくオーストリア出身のオスカー・ココシュカの作品で埋め尽くされ、それは壮観な見栄えだ。
やや気色悪いタッチの絵をかくシーレもまたオーストリア出身。
このオーストリアは、別段抜きんでた工業国でも農業国でもないが、音楽家や画家には居心地がよさそうで、彼らの芸術性を刺激する何かがあるに違いない。
尤も、超凡人の僕には、それが何かも分からないし、こんな国に一生住んだら退屈だろう程度の感想しかない。
いったんホテルに帰還して、昼食のイタリア料理店へ、
ところが目的の店に到着する前に、昨日言った「音楽の家」のすぐ隣に、「SALIERI」と言う名のイタ飯屋を発見した。
サリエリは、映画「アマデウス」の敵役で、モーツアルトを暗殺する役柄だった。
面白い店名なのでそばに寄ると、威勢の良いオッチャンが声をかけてきた、
「ニホン、サカナ、サムライ、オイシイヨ」と、まるで片言ながら、知ってる日本語を駆使して、猛烈に誘い込む。
「ボンゴレはあるか?」と聞くと、「OK、勿論」みたいな感じで、強制的にテーブル席へ案内された。
とにかく陽気なイタリアンで、「自分は日本が大好き」とか、「日本人に友達がいる」とか、立て続けにサービストークを繰り返していたが、そのうちに
セイジ・オザワをしっているか?」と言い出した。
「もちろん知っている」と答えると、「アイツは俺のベストフレンド、いいヤツだよ」みたいな調子で喋る。
全く不快感はないが、それにしても小澤征爾のベストフレンドとは、言い過ぎだろう。
ここのパスタは、かなりうまかった。
昼食が終わったのでホテルに帰ろうとしたら、大音量を鳴らしてパレードしているデモ隊にぶつかった。
見るからに派手で異様なファッションに身を包んだ連中が、オープンバスを中心に、歌って踊って進んでいく。
最初は物珍しさも手伝って、面白がっていたが、いつまで経ってもデモが終わらない。
ホテルに戻ってバルコニーから眺めると、そのデモは延々と続き、何と終わるまで三時間もかかってしまった。
その間中、数十台連なったバスには、上半身裸の若者や、けばけばしい化粧の男女が、ダンスしながら騒いでいる。
ネットで調べると、世界中からLGBTがウィーンに集まっているそうで、何とその百万人(らしい)。
道路中に、一見してそれと分かる男女たちが道路を埋め尽くしながらデモをしているのだから、百万人は大袈裟ではない。
マイノリティとか、日陰の存在と思っていたが、これだけのLGBTが一か所に集まると、壮観で迫力満点だ。
夜は、三年前に食べ損なったタイ料理「BANGKOK」へ。
ウィーンで一番のタイ料理店らしく、確かにトム・ヤム・クンスープも、グリーンカレーも美味かった。