実は千葉県知事は、結果が既に決まっているようなものだ。
それでも、多額の税金を投入して選挙をしなければならない。
民主主義は、手間とカネがかかる。
しかしそんな出来レースでも、楽しみ方はある。
今回の知事選には、史上最多の八人が立候補している。
それまでの森田健作知事は、全国の一都一道二府四三県の中でもかなり低レベルとして知られていた。
昨年の台風災害対策で無能ぶりを全国に晒し、今年の武漢肺炎対策では小池百合子に手玉に取られてきた。
その後継者選びだから、元より大きな期待がある訳はないが、八人の中の数名は、実に怪しげな候補者だ。
中でも「加藤けんいちろう」君のユニークさは秀逸だ。
「加藤けんいちろう」君は東京出身の71歳だが、学歴が凄い。
ここで医学の世界に方針転換したようで、浜松医科大学学部卒後、エール大学大学院公衆衛生学修士課程を修了したのが1986年。
その後は日赤医療センター内科、慈恵医大第三病院リハビリ科、自治医大精神科で勤務医として働く。
医者のはずだが、専科が次々と変わっているのが不思議だ。
このけんいちろう君の、座右の銘もまた笑わせる。
普通、座右の銘とは「これこそ自分の気持ち」と、常に身近にある戒めの言葉のはずなので、たくさん紹介するケースは稀だ。
しかしこのけんいちろう君は、座右の銘を七つも上げる。
その中には「味噌樽と糞樽の敷居を取ると全部糞樽になる」との、日常余り使われない「箴言」もある。
政策提言のトップで「一期四年だけの千葉のバイデン」を目指すらしいが、今は危機の時代なので「対立よりも結束」を訴える。
そして二人の若手有力候補は未だ未熟なので、副知事に起用し、二年間は海外留学や海外視察をさせると、実に親分肌で太っ腹だ。
そしてけんいちろう君の政見放送のハイライトが、後半に飛び出した小池百合子東京都知事への公開プロポーズだ。
https://www.youtube.com/watch?v=teu4jDeJRLI
途中仰々しく「サイバー、電磁波、宇宙の危機」を訴えた後、千葉県北総線の運賃が高いことを問題視する。
少子化対策は「20歳になった希望者全員の男女の精子と卵子を冷凍保存する」などの、アンバランス感が飽きさせない。
そして最後にしんいちろう君が「私の現在の夢は」切り出した内容が、大評判の大人気になっている。
・千葉県知事に当選して小池百合子氏と結婚する
・彼女は落選するような情けないオトコは相手にしない
・私「千葉のバイデン」が千葉県知事になれますよう
・ついでに私事で恐縮だが、小池氏とめでたく結婚できるよう
・千葉県民の皆様の温かいご支援を是非お願いしたい
・知事になれさえすれば
・一都三県の知事会でこそっとプロポーズを仕掛ける積り
始めから終わりまで、真面目くさった表情で淡々を原稿を読む。
千葉県民の温かい支援があれば、小池と結婚できると思っているようだが、何故彼が結婚したい相手は小池なのだろうか。
とりわけ71歳にもなる爺さんが、プロポーズを「こそっと仕掛ける」とは、何とも微笑ましいではないか。
そんなしんいちろう君のユニークな発想は、一体彼がどんな人生経験を経た上で生まれたのだろうか。
しかも本人には、ウケ狙いとか、笑いを取ろうとする気配は皆無だ。
こんな面白い放送は、人気お笑い芸人にも無理だ。
小池百合子は、こんな「純情そうだけど摩訶不思議で怪しい気な爺さん」に惚れられることをどう思うだろうか。
僕は小池百合子が大嫌いだが、このしんいちろう君の想いが成就することは願ってやまない。
そのためには、しんいちろう君が千葉県知事に当選しなければ、単なる絵に描いた餅になる。
千葉県知事なんて、森田健作でも務まった役職だ。
ここは71歳しんいちろう君が、千葉県知事として小池に「こそっとプロポーズするところを見てみたい。
良識ある方々からは非常識と顰蹙を買うだろうが、僕は千葉県民の勇気ある一票に期待したい。