京都に到着後、いよいよ旅の目的である「京都での花見」開始。
先ずは、夕方に醍醐寺へ。
その昔は豊臣秀吉も愛でた桜の景観で、今回の京都花見旅のトップバッターとして申し分ない。
なかなかの風情に満足。
かねて予想されていた通り、中国人の姿がほとんど見えない。
中国人だけでない。
流行り病以前は、世界中から押し掛けていたはずの観光客の姿が様変わりしている。
そこにいるのは、日本の爺さん婆さんばかりだ。
そして紛うことなく、我々夫婦もその中の一組なのだ、
彼らは手に手にスマホを持ち、歓声を上げながら満開の桜を撮影している。
そしてまた我々夫婦も、それと全く同じ行動をとっている。
こんなはずではなかった。
引退後の生活は、自宅周辺の四季の変化を静かに愛でながら、優雅に、そして心豊かに過ごすはずだった。
まかり間違っても、観光地の雑踏で嬌声を上げながら撮影スポットを奪い合うような、醜態を晒すはずではなかった。
四年前は青森の弘前城で、そして今年は京都で、満開の桜を見て大喜びする。
まるでKポップスを追っかける、評判の悪い日本の老人たちを変わらない。
どこで道を踏み間違えたのかは知らないが、我ながら月並みの爺イに成り果てたものだ。
醍醐寺の後は、途中の知恩院にお参りして、次の目的地の八坂神社へ。
暮れなずむ境内の屋台を冷かしていたら、猛烈に腹も減ってきた。
狭い店には、会社員風の先客四人。
お好み焼きを肴に、ビールや焼酎で阪神戦の野球中継を見ている。
この日の阪神は今シーズンの初勝利を挙げ、店主も客も大喜び。
彼らによると、阪神はこのままの勢いで勝ち続け、最後は優勝しそうな応援振りだった。
しかし現実は厳しく、阪神はその後も連戦連敗が続き、とうとう1勝15敗のプロ野球ワースト記録を作ってしまった。
いやしくもプロ球団を名乗る野球チームが、17回戦ってわずか1回しか勝てない。
そんな阪神の貴重な一勝に立ち会えるとは、なんとラッキーなことか!
京都まで花見に出かけてきて、歴史的な瞬間に立ち会えるとは、実に旅行の甲斐があったと言うものだ。
さすがに疲れて、この後はタクシーでホテルに帰還。
運転手は、京都の観光客減少で商売上がったりだと嘆いていたが、それはホテルも飲食店も一緒だ。
我々が宿泊したホテルも、恐らくは稼働率三割以下だと思われた。
それもこれも全て、中国武漢発の流行り病の所為なのだが、観光する側にとってはこんな好条件はない。
世界遺産の宝庫京都で、世界遺産クラスの京都の花見が満喫できる。
夫婦でそんな喜びに浸った一日だった。