サウンド・オブ・ミュージックの世界

もう50年も前に上映されたミュージカル、サウンド・オブ・ミュージックは、ここザルツブルグを舞台としている。
そしてザルツブルグを訪れる観光客は、先ず間違いなく、この映画の舞台となったザルツカンマーグートへと出かける。

我々夫婦も、全く例外ではない。
朝8時15分のバスで、標高1783mのシャーフベルク山を目指す。
このバスは、観光専用ではないので、街中の色々の停留所に止まり、そのたびに運転手が乗客にチケットを販売している。
50分ほど経過したところの、ザンクト・ギルゲン駅で、フェリーに乗り換え。
ところがこの駅周辺、どこを見渡してもフェリーの乗船場など見えないし、案内板すらない。

不安な気持ちで歩いていると、前方にも不安気な外国人夫婦が歩いていた。
彼らの方が先に目的地を確認したようで、「ついて来い」みたいな話になり、大いに安心した。
ここで待つこと1時間、ヴォルフガング湖遊覧船で、シャーフベルグバーン駅まで35分間の船旅。
つづいて登山鉄道で、ガタガタしながら上り続けて40分。
やっと山頂の、シャーフベルク・シュピッツェに到着。
昨年のマッターホルンツークシュピッツェの両方とも雨に祟られたが、この日は快晴。
360度のパノラマビューを満喫した。

帰りは、登山列車でシャーフベルクまで降りた後は、バスでバード・イシュルに移動。
ここにはカイザー・ヴィラがある。
皇帝フランツ・ヨーゼフの避暑地であり、ここもまた観光客が押しかけてくる。

しかし、この両方の観光地とも、中国人の数は少ない。
特にシャーフベルク山を目指しているのは、ほとんどが60歳以上の老人たちだ。
考えてみれば、サウンド・オブ・ミュージックの世界に浸ろうとしているのは、大半がこの世代。
中国では、この映画を見た人が少ないのだろう。

二日前から患った風邪は、まだ治りきれていない。
しかしこの日は、我々夫婦にとっては、何と41回目の結婚記念日。
少々無理をしてもと出かけたが、だんだん声も出なくなってきた。
同時に妻まで、「頭が痛い」と言い出す。
やむを得ず夕食は、一人でアジアレストランに行く。
ところがこの店、午後7時半の書き入れ時のはずなのに、客が一人もいない。
不安になって「クローズ?」と聞くと、中国人のような主人が「ノー、ノー、オプン」と訛りの強い英語で答え、慌てて準備を始めた。
そんな店だから、まともな料理を期待するのが無理。
スープも焼きうどんも、タイなのか中国なのか、はたまた日本なのか、本籍不詳の料理が出てきたが、疲れていたので不思議と食べることが出来た。

夜は、サッカーのチャンピオンリーグ準決勝、バイエルンバルセロナを見ながら眠った。