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参政党内部対立と組織論

前回の参議院選挙で晴れて一議席を確保し国政政党になった「参政党」なる政党がある。

地方選でも議席を確保し、新保守政党として期待する人たちもいたが、しかし好事魔多し。

新党にありがちな内部分裂が発生し、当初の党設立時の幹部ゴレンジャー五人衆の内の三人が離反、バラバラになってしまった。

特に、その選挙で獅子奮迅の活躍をしたと称する科学者、武田邦彦が、実質的なクーデターで党首になった神谷宗幣へ強く反発し、昨年末まではほぼ連日YouTubeで神谷の悪口をアップしていた。

 

武田の主な主張は

・参政党設立目的は弱い立場の人を助ける政治をするため

・党員全員が政治に参加する組織だと選挙で訴えてきた

・党員全員で議論して政治方針を決める新しい政党だった

・しかし選挙途中から神谷だけを支援する組織になった

・ボードメンバーも神谷が勝手に決めた

・そのため当初設立に参加したメンバーが次々と離脱

・今や神谷独裁体制が確立した

・これは党設立から選挙を通じて訴えた参政党の理念から著しく逸脱している

となっている。

ついでのように

・神谷は不倫していて愛人を組織中枢の要人にした

・神谷は共産党が理想組織と発言した

と、いささか揚げ足取り発言も繰り返してきた。

 

武田は周囲からもかなり諫められたようで、今年になって「もう参政党攻撃はしない」と矛を収めたが、参政党が危うい組織であることを世間に認知させる効果はあった。

僕は心情的には武田を応援したい側の人間だが、しかし組織運営の立場から見れば武田の考えは幼稚だと断じざるを得ない。

武田の主張にある「方針は全員で議論して決める」なんてことは、聞こえはいいものの内容が全く伴わない空論だからだ。

 

武田は民主主義への幻想が強い。

確かに民主主義は全員参加で議論し、多数決で方針を決定する。

我々は日本の自民党アメリカの二大政党を見てきたので、あたかも組織でも多数決が方針決定の手段として有効と考えている。

しかしそれは老成した組織だから可能なのであって、少数派が自説をスッパリと諦め多数派に全面協力することはそう簡単なものではない。

通常は約半数は方針に不満を持つ連中が内在されるので、いつまでたっても挙党一致、挙国一致にならないものだ。

その場合はせっかく決まった方針の組織内徹底が遅れ、独裁体制で迅速な行動をとるライバル組織に後れを取ることになる。

だから組織は不満解消のためにポーズとして全員で議論する格好はとっても、最後の方針はたった一人で決めざるを得ない。

 

武田が「呆れた神谷発言」として紹介した「共産党の組織が理想」は、共産党へのアレルギーがある人たちには神谷へのネガティブキャンペーン効果はあるかもしれない。

共産党レーニンボルシェビキ組織以来独裁体制の権化なので、共産党型独裁体制と言えば聞こえが悪いが、しかし実は他の組織も同じ構造なのだ。

全ての組織は上意下達型であり、上からの命令が絶対でなければ組織が機能しない。

軍隊や宗教組織がそうだし、発展途上国の政治は例外なく独裁だ。

政治だけでなく更に身近を考えれば、民間の会社も社長、会長の独裁運営だ。

全員参加で議論しなければ方針が決まらないなら、そのスピードの遅さでライバルとの競争に勝つことができない。

民間企業でも神谷がやっているように、自分が気に入った社員を役員に登用するし、その人事権が権力の源泉になっている。

 

武田と神谷のバトルで注目を集めた参政党騒動は、組織としては中央集権体制を固めた神谷に、全員参加の意思決定を唱える武田に勝ち目はない。

しかし武田の抵抗は、次の選挙で参政党の獲得したかもしれない票数を減らすことで、神谷に対して一矢を報いることになる。

老骨に鞭打って神谷を告発した武田だが、虎は死んで薄皮を残した。