昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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「前任者は会議に出席しない方が」だって

彼の文豪トルストイが「アンナ・カレーニナ」の冒頭で喝破した「すべての幸福な家庭は互いに似ているが、不幸な家庭はそれぞれの仕方で不幸である」の前半部分は真に正しい。
何故なら、日経新聞の「私の履歴書」に執筆する、いわゆる勝ち組経済人は、どれもこれも似たような人生を歩んでいるからだ。

勝ち組経済人のストーリーの基本は、
・厳しい父親と優しい母親が、愛情タップリに育ててくれる。
・子供のころは貧乏で、ヤンチャ坊主。
・決してガリ勉ではないが、成績は優秀。
・偶々縁あって入社した会社で先輩に恵まれ、周囲の軋轢にめげる事なく思い切り仕事に没頭。
・すると幸運が重なり多くの成果を挙げ、当初全く予期すらしなかった社長就任を要請される。
・自分で勤まるかと逡巡するが、これもまた天命と受諾する。
・そこで辣腕振りを発揮、それまで会社を覆っていた古い体質を一掃、中興の祖と崇められる。
・輝かしい実績を残した後、信頼できる後輩を後継者に指名。
・決して内政干渉する事なく、一歩引いた会長、顧問、相談役職を歴任。
・最後は業界団体のリーダー、経団連の幹部となる。
・そして、日経新聞の「私の履歴書」で自慢話を披露する。
と、大方こんなところだ。

現在はJXホールディングス渡文明相談役の履歴書が連載中だが、ほとんどこの流れに沿っている典型的な勝ち組経営者だ。
この人の履歴書の中に、面白い記事があった。
自分が会長に退いた後、会議に列席していると、全く盛り上がらない。
「前任者がいれば、その人の路線を否定するのが難しい」と言われ、それ以降は一切会議に出席しなくなったらしい。
いかにも、後継者を慮った大先輩風の振る舞いであり、自慢気な文章になっていた。

しかし本当にそんな殊勝さがあるのなら、会議なんてチャチな事を言わず、会長職そのものも辞退する方が良い。
会議なんて、実はたいした決定をするわけではない。
会社では、株主総会に続いて取締役会の決定事項が一番重い。
その場に、しかも代表権を手放さずに会長として居座っていたら、後継者が自由に発言できるはずがない。
本当に後継者に自由な経営を任せるのなら、そこまで腹を括ることだ。
と言うと、必ず「まだまだこの会社には自分の経験が必要だから」と言い訳するだろうが、実はそんな事はない。
それは本人がそう思いたいだけで、後継者にとっては有難迷惑でしかないのだ。
万一社長が前任者を頼りにするようなら、本来は後継者の資格がない人間を指名したことになる。

これは皮肉な見方だが、サラリーマン経営者は自分を越える後継者は絶対に選ばないと言う。
後継者の判断基準は、偏に自分を大事にしてくれる人間、言い換えれば自分の言う事を聞く人間に限定される。
その結果、前任者の三割減の能力を持った新社長が誕生する。
これが三代も続くと、世間的には全く無能だが、社内の目配りだけに才能があるような経営者になり、会社の業績がジリ貧になってしまう。

社長の評価は、その会社の一般社員が一番鋭く見抜いている。
最近は、明らかに内部告発に近い2チャンネルへの投稿も増えているので、会社名を入力して検索してみると良く分かる。
周りを見渡して、いつまでたっても業績が回復しない、社員の評価が芳しくない経営者がいるような会社の株は、絶対に買わない方が良い。