昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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N数1のオトコ

N数とは、サンプルの数。
Numberの頭文字。
 
何か行動方針を決定する時、その裏付けとなるN数は多ければ多いほど良い。
一般的には、そう思われている。
僕は、仕事の現役時代は、まるで逆の「N数1のオトコ」と言われた。
セッカチで慌て者のキャラへの揶揄、ヒヤカシ的な要素が大きいが、決断が速い事への、ほんのチョット褒め言葉的ニュアンスもあると思っている。
 
前例があれば、何も決めるにしても安心できる。
だから、より安心するためには、たくさんの前例を参考にした方が良い。
そんな意識で、N数を多く求めたがる。
多くの企業で、事業の意思決定をする時には、多かれ少なかれ、前例を探す事が必要だった。
 
しかしいくらN数を増やしても、全てが正しい判断材料になる訳ではない。
我々は、発生する現象には、いつも同じ因果関係があると思っているが、実は人や組織によって少しずつやり方が違い、必ずしも前例が正しい方法や結果を示してはいないからだ。
 
そもそも成功した事業は、前例がない中での果断な決断によって導かれたものであり、誰かが上手くやったケースは、既に人口に膾炙したものだ。
N数を増やすのは、一見事業を慎重に見ているようでも、実は問題の先送りと一緒。
責任者は、自分の責任でリスクを負わなければならない。
 
僕は、性格的にも、「待て、しばし」が苦手で、N数がゼロでも即断即決を旨としていた。
だからN数が1もあれば、それで充分、「責任は俺がとる」と強がってゴーサインを出した。
実際のところは、カッコよく責任を取ると言っても、叱られ役を買って出る程度の覚悟しかない軟弱さだったが、それでも長い会社勤めの中では、辞職覚悟で臨んだことも二、三度はあった。
こんな仕事ぶりが、後輩たちからは「N数1のオトコ」と言われた所以だ。
 
そんな時に僕は、こんな例を出して反論していた。
「君たちは結婚する時にも、N数をたくさん集めたかい?たいていの場合、N数が1でも結論まで出しただろう。むしろN数が多いほど、事態がややこしくなるものだ。N数が1でもあれば御の字なのだヨ。」
 
これは仲間内でしか通用しないかなり怪しい詭弁だが、事業で最終結論を出す為に必要なのは、常日頃の事業への取組方の集積であり、前例のN数を増やす事ではないとの思いは変わらない。