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太陽電池事業がシャープ凋落の元凶の一つ

日本家電業界の雄だったシャープが、何と買収されてしまった。
買収したのが台湾の鴻海精密工業だったことで、ショックが更に広がった。
いくら栄枯盛衰は世の習いとは言え、鴻海はアップルの下請けメーカーでしかなく、しかも労働条件の劣悪さから、ブラック企業としてリストアップされたこともあるメーカーだ。
日本の技術流出を心配する声や、名門日本企業の凋落を嘆く声が多く聞かれた。
 
僕は、少し違った想いを持って、この買収劇を見た。
 
鴻海がシャープに提示した条件は、日本再生機構のそれに比べ、格段に魅力的だった。
曰く、事業の切り売りはしない。
曰く、40歳以下の社員のリストラはしない。
曰く、7千億円の資金を援助する。
一つだけ、経営責任を追及せず、現経営陣を更迭しないのは評判が悪いが、再生機構側の倍以上の資金投入を約束されれば、全く勝負にはならないだろう。
 
しかし鴻海の「事業の切り売りはしない」約束には、一つ条件が付いている。
それは「太陽電池事業を除いては」の文言だ。
鴻海によると、シャープの赤字の原因はその大半が太陽電池事業であり、その他の事業は比較的健全らしい。
しかし10年前は、そうではなかった。
シャープの太陽電池事業は世界一の生産量を誇り、次世代エネルギー事業の旗手として持て囃されていた。
 
シャープは太陽電池分野で世界一になった翌年、シリコン原料の調達に失敗し、栄光の座を守れなかったが、それでも、シャープ、京セラ、三菱電機、サンヨーを先頭にした日本の太陽電池事業は、品質的にも世界のリーダーだった。
また太陽電池事業そのものが、脱化石燃料のクリーンエネルギーの象徴として期待を集め、特にヨーロッパで需要が高まり、世界的に広がっていった。
日本でもあの史上最悪首相と悪名高い菅直人が、自分の首相任期の延命だけのために、突然太陽電池原発に代わるエースに押し立てて、援助法案を成立させた。
太陽電池は、前途洋々の事業のはずだった。         
シャープ経営破綻の最大原因と目されている堺工場拡張計画も、太陽電池への大投資があった。
それが何故に、会社の足を引っ張る極悪事業にまで成り果てたのだろうか?       
 
一つには、中国とのコスト競争力に負けたことが挙げられる。
太陽電池と言えば、如何にも近代技術の粋を集めたように思われるが、実はシャープが担当するのは、部品を調達し、組み立てるだけ。
自動車産業も似たようなものだが、自動車が数万点の部品を組み立てるのに比べ、太陽電池は精々数十点の部品を組み立てるだけだ。
だから参入障壁が極めて低い。
日本のように労働力が高コストの国では、発展途上国に到底太刀打ちできない。
 
更に問題なのは、太陽電池で生産される電力そのもののコスト競争力がないことだ。
水力や火力発電の電力に比べ倍以上のコストなのだから、よほど「自然エネルギーこそが世界を救う」と単純に信じ込んでいる奇特な人以外は使いたがらない。
そんなモノだから、政府の援助なしではやっていけない事業なのだが、政府にしても投入できる税金には限度がある。
太陽電池は結局のところ、世界中で尻すぼみ状態になっているのが現状だ。
 
一世を風靡したシャープの太陽電池事業は、鴻海の眼中にはない。
シャープ社員の中には、太陽電位の権威として尊敬を集めたような人物たちがいたが、鴻海からも見放された太陽電池事業は果たしてどうなるのだろうか?
余計な心配をしてしまう。