妻が最近、連続テレビドラマ、「集団左遷」にハマっている。
僕は、連続ドラマは見ないし、TBSは嫌いだし、何より番組の開始時間、午後9時は既に就寝中なので、一緒に見ることはないが、翌朝には、興奮した妻から番組の克明な進捗状況報告がある。
何でも、成績不振の銀行支店を巡る、銀行員同士の葛藤がテーマらしい。
ハンサム俳優の福山雅治が演じる、底抜けのお人よし支店長が主人公で、超個性派俳優、香川照之が副支店長として脇を固めて、支店長を助ける。
それに対して、三上博史演じる本社常務が、超の付く悪役。
常務はワルの限りを尽くし、支店長の仕事を邪魔し、支店を閉鎖に追い込んでいく。
しかし支店長は、副支店長や、急にやる気を出した支店の行員のをサポート受けて、健気に、且つ必死にこれを跳ね返す。
ストーリー自体は、今までに何度もお目にかかっていて、目新しいものではないので、番組を見ていなくても、ほとんど物語の流れが想像できる。
この手の番組が成功するかどうかは、実は悪役の存在感による。
この番組では、三上博史がその悪役を快演していて、嫌われ役に徹しているらしい。
妻などは、すっかり主人公に感情移入をしているので、三上博史の悪口まで言い出している。
しかし俳優としては、悪役を演じきれないと、役の幅が広がらない。
三浦友和がその典型で、あの顔と醸し出す雰囲気が、全く悪役にそぐわない。
彼も何とか芸域を広げようと、ヤクザ役などにチャレンジしていたが、怖さ、恐ろしさに程遠いので、全く場違いになってしまう。
福山雅治も似たようなものだ。
彼は、二枚目半の役に活路を見出そうとしているが、果たして成功するかは不明だ。
親から貰った美貌で得ばかりしていると思われがちだが、いつも明るく元気な二枚目役では、そのうちにファンに飽きられてしまう。
しかも、二枚目分野は競争が激しく、次々と新人がデビューしてくる。
追われる立場のストレスが大変だろうと、三浦友和や福山雅治にひそかに同情したいほどだ。
マァ、余計なお世話だろうが。
最近は地上波テレビをほとんど見ないので、その分、衛星放送の中国の歴史ドラマを見ることが多い。
三か月ワンクールの日本のドラマに比べ遥かに長編で、全86話とか全74話とか、とにかく長丁場モノばかりだ。
僕はそれを録画して、一挙にまとめて見ることにしているが、中国ドラマでも、悪役の存在感が番組を盛り上げるステムになっている。
とにかく悪役は徹底的にワルで、イイ人の主人公をこれでもかとばかりにイジメるし、邪魔をするのは、日本と同じ。
主人公は耐えに耐え、苦労に苦労を重ねながら、最後はハッピーエンドとなる。
こちらも分かり切ったストーリーだが、それでも視聴者が多いのは、勧善懲悪を求める民意の表れだろう。
そうすると、一般大衆の感性は、日本も中国も一緒のことになる。
皆が善を求め、悪を嫌うのなら、日中の関係がうまくいかないはずはない。
しかし日本では絶対に放映されないが、中国で悪役の立場にあるのは、多くの場合、日本人や日本の軍隊だ。
僕は中国で一度、こんなテレビ番組を見たことがある。
中国語は全く分からないのに、表情だけで悪役日本人の非道さが伝わってくる。
こんな番組を連日のごとく放映して、日本人は悪いヤツと刷り込むのだから、中国人が反日に凝固まるのは至極当然だ。
悪役の存在が、物語の中だけで完結するのなら問題ない。
しかし僕の妻のように、現実と重ねてしまって、悪役を嫌う人たちも結構いる。
その証拠に、人気ドラマの悪役は、路上で罵倒されたり、果ては脅迫状まで届くことがあると聞く。
日本で、反中国映画や反韓国映画を放送すれば、すぐに両国から抗議が来るし、何よりも国内のサヨクが大騒ぎをする。
しかし逆の立場では、やられっ放しなのが現実だ。
日本でも悪役へ嫌悪感を持つ妻を見ると、中国、韓国の連中が、テレビに影響されないはずがない。
別に両国に嫌われても構わないが、それでも謂われない言い掛かりには腹が立つ。
史実と違った番組を放送すれば、日本国を挙げて強く抗議するべきだと思う。