朝起きてカーテンを開けると、朝靄の中にトレドの町がたたずんでいる。
しばらくすると、朝日を浴びたトレド市に変わる。
早い時間から素晴らしい眺望を眺めながら、ホテルベランダで談笑する客が多い。
知らない人に声をかけるのは苦手な日本人だが、このホテルにいると隣の部屋の客が、長年の知己のような気になり、「Good morning.」の挨拶が素直に出てくる。
とうとうスペイン観光の最終日となった。
かなりの疲労感があるが、この日はパラドールそばのバス停から、終点のソコドベール広場まで、ローカルバスを利用してみた。
出発時間は、全て各時間帯の55分。
用心して10分以上早めにバス停に到着したが、客が誰一人いない。
停留所はここでいいのか、あるいは時間になったらバスが来るのか、不安な気持ちで、通りすがりのランニング中のオジサンに、「バス停はどこ?」と質問。
するとこのオジサン、スペイン語しか話さないのだが、バスの単語と困った表情で全てを悟ったらしく、「アウトブス?」みたいに聞き返したので「イエス、イエス」と返事すると、バス停を指さし、「シンコシンコ」と55分発まで教えてくれた。
そのうち2分前に、別のカップルが登場したので一安心。
料金はわずかに1.4ユーロで、市街地まで行けるので大助かり。
前日の「TOTORO SUSHI」の近くにも、停留所があった。
この日は月曜日、休館の施設も多く、楽しみだった「エル・グレコ美術館」もそうだ。
バスを降りて、最初にトレド大聖堂へと赴く。
この間のスペイン旅行で、各都市の大聖堂を訪問し、その度に感激ひとしおだったが、トレド大聖堂もまた、素晴らしい建物だった。
映画形式で大聖堂を作ったクラフトたちの苦労話を紹介していたし、キリスト教に関する展示物も見事なモノばかりだ。
中でもエル・グレコ作品の前には、黒山の人だかりができていた。
また高さ3mの聖体顕示台は、200㎏の金や宝石で飾られていて、まばゆいような存在感がある。
しかし、宝石泥棒の心配なないのかと、余計なおせっかいをしたくなる。
続いて、サント・トメ教会へ。
道を間違えると、坂道の逆走しなければならないので、道標を参考に、細い路地を曲がりくねって進んでいく。
ここにもまた、エル・グレコの傑作「オルガス伯爵の埋葬」が飾られているが、写真撮影は一切禁止。
最後は、唯一この日オープンだったサンタ・クルス美術館へ。
ここにも、エル・グレコ作品が大量に展示されていた。
トレドは、エル・グレコの街だ。
しかもこの美術館は、シニアはタダで見学できる。
スペイン観光の最後は、実に儲けた気分で終了。
帰りもまたバスを使った。
流石に疲れ果てているが、この日の夕食はホテルのディナーを予約。
スペイン最後の夜だから、思い切って贅沢をした。