Facebookで「ラーメン倶楽部」に所属している。
ここでは。我が家周辺を含むかなり広範囲な地域の同好の士が、ラーメンを食べる度に写真付きで報告してくる。
最近、ラーメンを食べる前に、必ずスマホで写真と撮っている連中がいるが、「我こそラーメンレポーター」の使命感に燃えているようにも思われる。
中には、ラーメン評論家顔負けの蘊蓄を傾ける猛者もいる
やれ、「今日のスープの出来は」とか、「麺のゆで具合は」とかの解説投稿を読むと、是非ともその店に行ってみようとの気分になる。
そんな輩には熱心なファンまでついていて、ラーメン会ではそれなりの影響力を持っているようだ。
店にとってもこんな客は、タダで宣伝できるから歓迎する半面、悪口をかかれると売り上げに直接マイナスにもなりかねない。
最終的には、店主の味への自信の裏返しになる。
一時期ヤラセ問題も発生したが、知らない店を紹介して欲しい時には、極めて合理的で便利なシステムなので、今後共ますます充実していくだろう。
海外でもラーメンは大ブームで、ちょっとした大都会には、日本のラーメン店が必ず進出している。
決して美味いわけではなく、もしも日本でなら、とても人気が出ないであろうレベルでも、海外では充分に通用していて、行列ができていたりする。
博多ラーメンの一風堂は、日本ではもはや人気店とは言えない普通のラーメン店だが、ニューヨークで見た時には、日本以上の行列ができていた、
今やラーメンは、寿司と並ぶ、日本を代表する国際的な国民食だ。
我が家の近所に、この6月にオープンしたラーメン店が二軒ある。
その一つは、オープン早々行列ができるほどの人気振りで、「ラーメン倶楽部」に投稿してくるファンも多い。
斯く言う僕も、もう三回にわたって訪問し、その度に写真入りで報告している。
僕はアマチュアレベルの投稿者なので、その後の店の客足に影響を与えるとは思えないが、それでも毎回、30人以上が「いいね」マークをつけてくる。
田舎町の我が家界隈で、しかも開店間もないこの店のファンが、こんなにたくさんできていることに驚くが、その人気を高めた要素の一つが、ラーメン通たちの「ラーメン倶楽部」での褒め言葉にあることは間違いない。
しかし僕は、一番のお気に入りの店は、絶対に誰にも紹介しない。
無論、「ラーメン倶楽部」への投稿など以ての外だ。
そんな自分なりの、ラーメン哲学を実行してきた。
これは複雑なファン心理の表れで、多くの人に僕が大好きな素晴らしいラーメンを知って欲しい気持ちもないわけではない。
しかしそれ以上に、その副作用で長蛇の列ができてしまうのも嫌なのだ。
ほとんど知られていない店のラーメンだが、自分だけが知っている、そんなセコイ優越感に浸りたい。
僕だけの秘密基地の扱いなので、不特定多数のファンなど不要だし、できれば今後共、誰にも知られたくない。
しかし件のラーメン店には全く迷惑な話で、本当のファンなら、是非とも五つ星レビューを拡散して欲しいだろう。
僕にすれば、このラーメン店が、不人気のまま閉店すれば困る。
店を継続できる範囲で、「知る人ぞ知るラーメン屋」が僕の理想なので、その匙加減が難しい。
幸か不幸か、この店に行けば、本当に飽きの来ない上質のラーメンを食べることができるので、最近では次第に口コミで評判が上がっている。
やはり昼時にもなると、行列に並ぶケースも増えてきた。
この店のパイオニアとしては、うれしいような、残念なような、複雑な思いで、通い続けている。
その店の名前は……….
「絶対、オ・シ・エ・ナイ!」