今大話題のN国党党首、立花孝志だが、僕の第一感は「このオトコ、アタマがいいなぁ」だ。
話術が優れているだけではなく、話しの順番やその内容が見事に組み立てられているので、YouTubeでも最後まで飽きさせない。
だからこそ彼は、裸一貫の身でNHKに戦いを挑み、苦労しながら同志を集め、今の国会議員の地位まで上り詰めてきたのだと思う。
更に、一見ハチャメチャな彼の言動だが、実は計算し尽くされているようにも見える。
この手のオトコは、その主張が全くブレないので、たとえアドリブで対応してもボロをださない。
何せ、「NHKをぶっ壊す」ことだけがワンイシューで、全ての結論をそこに結び付ければいいのだから話は楽だ。
恐らく彼は、口喧嘩で負けることなどないだろう。
会社勤めをしていると、たまにこの手の人間と一緒に仕事をすることがある。
間違いなく仕事ができるが、上司から見れば扱いにくいし、部下から見ても苦手な先輩だろう。
要は、元より組織には馴染まない人間で、遅かれ早かれ会社を辞めるヤリ手タイプだ、
このタイプのオトコは、できるからこそ、様々なややこしい仕事を与えられる。
その結果、立花孝志自身は「NHKの仕事で良心の呵責に苦しんだ」と語っているが、この辺は美談過ぎて眉唾だ。
但し、NHKにとっては、この間の立花孝志の仕事内容が、最も隠したい機密部分に触れているので、その情報を持ち逃げされたのは痛恨の極みだ。
またNHKは今になって、立花孝志にそんな仕事を任せたことを悔いているだろう。
振り返れば、こんなややこしいオトコを、有能だと思って採用したこと自体が間違っていたことになる。
以って他山の石。
各企業は、どんなに気が利いていても、実は野心満々のヤリ手の採用は控える方が身のためだ。
マツコ・デラックスとの喧嘩は、立花孝志の能力を良く表している。
マツコは自分の番組で「立花孝志もN国党を支持した人間も気持ち悪い」と酷評した。
テレビ側の人間にとっては、これは全くの共通項認識だろう。
何せ、仲間内のボス、NHKをぶっ壊すと公言しているオトコなど、テレビ局側の人間にとっては憎っくき敵でしかない。
これに対して立花孝志は、「政治家である自分への批判は構わないが、N国党を支持した有権者を愚弄するのは許せない」と反撃した。
「自分は批判されてもいいが、有権者を馬鹿にするな」とは、何とも考え抜かれた理屈ではないか。
気の利いた毒舌が売り物のマツコも、この正論の前には逃げ回るしか手がない。
マツコには、僕が敬愛する高須クリニックの高須克弥、元AV監督、村西とおる、アルピニストの野口健などの応援団が付いている。
しかし彼らのマツコへの応援歌は、「品がない」とか「暴力的」とか、果ては「一般人の表現の自由への侵害」とかで、端からそんな価値観を無視している立花孝志の前ではまるで無力だ。
失うものがない立花孝志と、テレビ局の立場を守らないといけないマツコでは、喧嘩の帰趨が容易に想像できる。
マツコは、喧嘩を売る相手を、単なる目立ちたがり屋の泡沫政治家と侮っていた。
N国党の悪口を言えば、国民からも身内のテレビ局からも拍手喝さいを浴びると、高を括っていたのだろう。
今回の顛末は、マツコが喧嘩上等の立花孝志を見くびっていたための自業自得だ。
ついでに、立花孝志の喧嘩上手振りについて言及すれば、彼はマツコの番組のスポンサーについて不買運動をすると宣言した。
しかもそのスポンサーの中でも、自分と関係あるところは除外して、対象を崎陽軒に絞って次のように呼びかけた。
「僕は崎陽軒のシウマイは好きだけど、マツコから謝罪がない限り、彼女が、いや彼かな、番組を続ける限り、崎陽軒のシウマイは買いません」
これもまた、実に良く練られた発言ではないか。
注意して聞くと分かるが、彼は聴衆に、皆さんご一緒にと不買運動を呼び掛けたのではなく、自分は買わないと宣言しているのだ。
こんなところにも、立花孝志の喧嘩上手振りが見て取れる。
尤も、毀誉褒貶の激しい立花孝志なので、当然アンチはこんなやり方に反発する。
却って「崎陽軒のシウマイを食べよう」運動が起きているので、崎陽軒のダメージは大したことはない。
被害が小さい抵抗運動は、スマートなやり方だ。
ダメージコントロールとして、マツコはサッサと謝罪した方が傷は小さい。
応援団を買って出た、高須克弥や野口健も、こうなると触らぬ神に祟りなしで、自分にも災いが降りかかるかもしれないからこれ以上の深入りは避けた方が無難だ。
何せ相手は、立花孝志とN国党!
N国党については、カルト集団との見方も強いし、実際に彼らの活動ぶりをみれば、立花孝志ともども、かなり暴力的で危険な集団だとの懸念も付きまとう。
しかもこの喧嘩で、仮に裁判にでもなって敗訴しても、立花孝志は全く平気の平左だ。
何故なら彼は、騒がれることでN国党の認知度が拡がれば、目的を達成するからだ。
弁が立つだけでなく、命の危険を冒してまで、天下のNHK相手の喧嘩に明け暮れてきた、失うもののない暴れ馬のようなオトコには関わらないことだ。
サッサとオサラバするに限る。