昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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薬漬け人生

我が家の隣のオジサンは、八十数歳にして実に矍鑠としている。

80歳まで大手企業の監査役を務め、数年前にやっとリタイアした御仁だ。

その時、「最後はクラウン」のキャッチコピーの如く、最高級トヨタクラウンを購入。

ほぼ毎日、そのクラウンを駆ってあちこちに出かける元気爺さんで、僕なんかは、「十年後はあんな年寄りに」とすっかり憧れている。

 

井戸端会議で妻がその奥方に、「お宅のご主人は、ホントにお元気で」とご追従を言ったら、意外な返事が返ってきたらしい。

「ウ~ン、違うのよ、毎日バケツ一杯ほど薬を飲んでいるの」

バケツ一杯は大袈裟としても、かなりの薬漬けは間違いないようで、あの元気の源が大量の薬のバックアップの所為とは、少々驚いたものだ。

 

ところが、昨年以降の僕もまた、隣の元気爺さん並みになってしまった。

昨年6月、総合病院で心臓疾患が判明し、即手術か否かの判断を迫られた。

その時は、担当医者が処方箋を間違えるような全く頼りないオトコだったので、手術とを勧められたが「御免蒙る」と回答したので、投薬治療となった。

そこで採用されたのが、血圧を下げ、心臓への負担を軽くする利尿剤治療だった。

ただこれが思いのほか効果があり、10日後には最悪時は強制入院直前だったBNP値が、医者も驚く半分以下になった。

そしてその後も下がり続け、最終的には健常人に近いレベルまで改善された。

 

と、ここまでは順調だったが、やはり完治には手術が必要だと説得され、担当医も変わったことから、昨年11月に入院手術をすることになった。

この手術も成功し、一番不安視していた後遺症もなく、わずかに二泊三日で無事退院となったが、この時以降、何と毎日11種類の薬を飲まないといけなくなってしまった。

毎朝、食後に11種類の薬を飲むとなると、その管理だけでも大変だ。

歳と共に忘れっぽくなっている身で、飲み忘れがないように、毎日細心の注意を払わなければならない。

医者から「一年後に再検査して、問題がなければ薬は減る」と言われ、それを楽しみに、海外旅行の時差調整などもこなし、PTPシートから薬を取り出す順番に自分なりの工夫をこらして、やっと一年後の検査入院にまでこぎつけた。

ところが、結果は極めて良好だったにも拘らず、一年後に減った薬はわずかに一種類。

そして今後死ぬまで、10種類の薬を飲み続けなければならないらしい。

何とも情けないし、煩わしい。

 

しかも、退院時に総合病院から70日分も渡された10種類の薬の中には、一日一錠ずつ服用の普通の薬が七種だが、二種類は一日半錠、一種類は二錠と、その服用数の管理だけでも一大事だ。

薬局に問い合わせると、「病院所有の薬の成分濃度で、ややこしい投薬指示になっているが、我が店の在庫薬なら、全て毎日一錠ずつ服用ですむ」とのこと。

しかし70日分を捨てるわけにもいかないし、何より、その店で薬を購入するにも医者の処方箋が必要だ。

そんなわけで、正月明けの診察以降は、少しは薬の管理が楽になるが、総合病院には、ロクに薬の在庫を抱えていないことも判明した。

餅屋は餅屋、薬のことは薬屋。

 

いずれにしても、古希を迎えた途端に、隣の元気爺さんみたいな薬漬け老後を迎えることに相成った。

前向きに捉えれば、これで更に10年くらいは、生きる可能性があるとも言える。

強がりだけど、そう思えば、毎日飲まなければならない10種類の薬も、命をつなぐ頼もしい存在に見えてくる。