仙台出身の元民主党、元国民民主党の参議院議員、桜井允が自民会派入りを表明した。
途端に、今迄手弁当で桜井の選挙を応援していたらしい連中が大挙してTwitterで、「裏切者!」と罵倒している。
僕はこの手の市民グループは、親の仇よりも嫌いな方だが、今回ばかりは応援したい。
桜井は1998年、当時の民主党から参議院選に立候補しトップ当選し、その後も政党は変わっているものの、連続四選を果たしている。
目立ちたい一心で、テレビカメラの前で大騒ぎをする元民主党議員どもは、その多くが比例復活のゾンビ議員だが、桜井は珍しく「選挙に強い野党議員」のようだ。
その桜井が自民会派入りした理由は、与党に行かないと仕事ができないかららしい。
しかし、この論理はおかしい。
桜井は、やりたい仕事をコロナ対策と具体的に挙げている。
だが、桜井自身、既に国民民主党を離党し野党統一会派所属だったし、補正予算にも賛成したので、今のままでも与党のコロナ対策に協力することは可能だ。
国会の質疑で、ヤクザまがいの濁声で官僚を恫喝した姿は、国会議員の品性に欠ける行為として、今でもネット界の語り草だ。
最近まで野党候補として、与党、自民党候補と議席を争ったのだから、当然ながら立候補の時に訴えた「やりたい政策」は自民党政権とは全く違うはずだ。
武漢肺炎対策は国家にとって焦眉の急だから、基本的に異論反論は少ないだろうが、その他では「与党だからやれる仕事」と、自分の今までの主張とは矛盾しないのか。
桜井は目新しいモノ好きらしく、支援の市民グループと政策協定を結んでいたようだ。
さっそく市民グループから「協定違反なので議員辞職を」と要求されている。
桜井が獲得した票の中で、どれほどが反自民党政権の票で、どれだけが桜井個人への期待票かの特定は難しい。
だからこそ政治家は、所信や公約と違う行動はとってはいけないのだ。
しかも市民グループとは、政策協定まで結んでいたほどの仲間だったら、それに反する行動をとる場合は、議員辞職してやり直すのは、有力な選択肢だろう。
そもそも、与党自民党は、何でこんな桜井の自民会派入りを認めるのだろうか。
単純に考えれば、数合わせがある。
野党議員が一人減り、その人が与党入りしたら、プラスマイナス2の効果がある。
政局を考えれば、この差は大きい。
二番目は、人材の確保だろう。
桜井は、野党候補として、連続して自民党候補を破って当選してきた。
謂わば、選挙に強い政治家だし、仄聞する限り、人品骨柄はともかく、政策には通じていると言われる。
即戦力として引き抜けば、野党対策としては手っ取り早いし、効果的だ。
しかし、しかしだ。
どんなに政治家として桜井の力量が優れていても、ずっと反自民党だったオトコだ。
その間選挙区には、敗北したとは言え、桜井と戦った自民党公認候補が存在している。
候補者が選挙に負けた時の定番挨拶は「私の不徳の致すところで」だが、選挙敗北は候補者だけの責任ではなく、所属政党の力不足の所為でもある。
それなのに、桜井が自民会派に入り、その後の自民党への入党も視野に入っているとすれば、今迄の自民党地連や自民党員の「打倒、桜井」の努力は何だったのか。
細野も桜井も、選挙に強いと評価されているが、長らく自民党とは敵対関係にあった。
そんな政治家を取り込むことが、自民党の懐の深さとの意見もあろうが、政治は筋を通すこととの反論もあるし、自民党は節操がないとの批判も巻き起こる。
コロコロと政党を変えてきた政治家には、ヘンなヤツが多い。
誰とは言いたくないが、小池百合子東京都知事、今や自民党の実力者の二階俊博、後ろから味方を撃つ狙撃手の石破茂、無能防衛大臣だった岩屋毅等々、もっといるだろう。
少し古くなると、今に残る国益を損なう談話を発表した、河野洋平もそうだ。
「忠臣は二君に仕えず」
自民党は、桜井允や細野豪志の自民党入党を認めるべきではない。
仮に細野や桜井が、今迄の政治活動を真摯に反省した上で、自民党への入党を懇願するのなら、それまでとは全く違う選挙区で、文字通り草履取りから汗をかく再スタートとするべきだと思うのだが。